着眼点と文体の勝利

 第3回山羊座賞受賞作品。

 新人賞にもってこいな作風があるとしたらこれだろう。
 現状、飯に困らず生きていける日常に大きな不満があるわけでもないが、かといって日々、溌剌と元気に息をしているわけでもなく、ただの消化試合のように過ごしている薄い若者の、ありのまま。
 そのままを、ありのままに流れで書きながら退屈させず、独特のテンポで途中で読む手を止めさせることがない。

 ゆっくりしたラップみたいなこれを、「おしゃれな作品」と呼ばれることすら拒み通し、かといって一〇〇Mbpsというキラッとひかる単語は無視できない。

 あなたもダルい、わたしもダルい、全員ダルい。
 ペルソナに不満なんてないけど、ペルソナ使っても誰もが単なる無名の小石。
 あなたはほんとに笑ってる?
 みんなの仮面が一〇〇Mbpsに乗っかって世界中を駆け回ってる。

 単なるつぶやきだからこれ。

 ぬるぬるとしたそんなスタンスながらも一本通っており、鼻につかせることなく作品として読ませるというのがとにかく素晴らしい。
 この夜の散歩パートで二千文字という分量がちょうどぴったりなのもよい。
 円城塔賞むき。

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