ツーリング二回目
海軍カレーツーリングは面白かった。遠いのは遠かったけど、あれだけ走ると、これこそツーリングって感じがしたもの。ご近所ツーリングだって悪くないけど、やっぱりツーリングの魅力ってまだ見ぬ風景こそが醍醐味だよ。
「おはようございます」
今日は六甲山トンネル越えにするってさ。このトンネルは表六甲ドライブウェイを半分以上登ったところにあるのがネックなんだ。つまりはキツイ登りの末にあるんだよ。そんなにキツイ坂道なのに、
「六甲山観光のクルマも走りますが、トラックとかも多いところです」
六甲山の北と南を結ぶ幹線道路みたいなところで、通勤ルートでもあるのよね。まず挑むのは表六甲ドライブウェイの入り口までの鶴甲の坂だ。片道二車線あるし、この辺は鶴甲団地もあるし、大学のキャンパスもあるところだけど、ここからモンキーの心臓は悲鳴を上げ始める。
鶴甲の坂の続きに表六甲ドライブウェイがあるのだけど、ここから対面二車線になるし、ワインディングも強まってくる。信号の先の新六甲大橋のループ橋の坂も強烈なのよね。三速でも苦しいもの。
ループ橋を過ぎてもキツイのだけど、ラスボスがヘアピンだ。ヘアピンって、曲がるのも大変なのだけど、もっと大変なのは曲がった後の急勾配。というか曲がってる時だって勾配が半端ないもの。
「速度をあげて勢いを付けるなんて、怖くて、怖くて」
御意だ。そもそもあんな登りで勢いなんて付けられないし、それよりヘアピンが怖すぎる。そして最後の試練の登りになる。三速でフルスロットルにして、ひたすら登り終わるのを待つ試練の時間だ。
六甲山トンネルに飛び込んだら一息つく感じかな。クルマの流れは速いけど、対面二車線だから新神戸トンネルよりはマシって感じぐらい。トンネルを出るとそこは北区であり、北六甲であり、裏六甲になる。
「いつも思いますが気温が変わります」
そうなのよ。それでツーリングに来たって感じるのもあるけどね。料金所があるから十円払い唐櫃の坂を下って行く。表六甲よりワインディングはマシだけど、それでもなかなかだから速度を出し過ぎないようにしないと怖いのよ。
坂を下りて行くとそのまま六甲北有料道路に入れるんだ。トンネルを何個か潜ると有野の料金所があって、そこで二十円を払う。
「このルートって、三回も料金を払わないといけないのがネックです」
それは鈴音も思った。終点まで行っても全部で四十円なのは小型バイクのメリットだけど、そのたびにバイクを停めてグローブを外さないとならいものね。それと、六甲北有料道路は二車線あって景色も悪くないのだけど、ここもまたクルマの流れが速すぎる。
やっと終点の三田まで来たけど、ここで右折するのよね。必殺のフラワータウン回避の秘術だ。こっちだったよね。そこから相野に抜けて行って、さらに国道一七六号だ。うん、順調、順調。三田から篠山に入ると丹波の森街道って看板が出て来るけど、
「これは遠坂峠に続く街道になります」
遠坂峠ってどこなんだと聞いたら丹波から但馬に行く街道だって。だったら今日はそこを目指すよね、
「遠坂峠を越えても行けますが、今日は違うルートにします」
なんか楽しみだ。そう言いながら篠山口駅の西側を抜けて行ったのだけど、
「橋を渡った次の信号を右です」
黒豆の郷って書いてある方だな。ここで国道一七六号から外れるみたいだ。曲がってみると田舎道の快走路じゃないの。時刻も早いから国道一七六号も走りやすかったけど、バイク乗りならこんな道が嬉しいな。
それは良いけど哲也さんはどうするつもりだろ、篠山の北側には多紀連山が屏風のように聳えてるのよね。今日はそれを越えないといけないのだけど、鈴音は国道一七六号をそのまま走って鐘ヶ坂峠を越えると思ってた。だって地図で見たら、それが一番良さそうだったもの。
「そちらでも良いのですが、柏原から氷上の市街地を避けたくて・・・」
鐘ヶ坂峠を下るとそれなりの市街地が広がってるみたいで、そこには定番の信号が待ち受けてるだけじゃなく、昼間ともなればかなり混むのだって。そんなところは避けたいよね。だからこの道を選んだのはわかるけど、どこに行くのだろ。
多紀連山を左に見ながら田んぼの中の道を走ってるけど、山が近づいてきた。そうなるよね。どこかで山を越えないと北に行けないもの。どうしたって峠越えになるのだけど、険しくありませんように。ダラダラと登って行ったのだけど、
「あそこを右に入ります」
直進が三和、国道九号、曲がれば春日、国道一七五号ってなってるけけど、三和ってどこだ、どうやったら国道九号に着くって言うんだろ。そっちはともかく曲がってみると、これも良い道じゃない。それも下りだ。こんなに登ったっけ。
「篠山のあたりは高地なっています」
そうなんだ。ここは栗柄峠って言うらしいけど、道が綺麗だぞ。ここも険しい道だったらしいけど、最近になって改修工事が終わったんだって。これ良いぞ。坂を下り終えたら春日ってところだろ。ここも田園地帯で走っていて楽しいな。
「休憩にしましょう」
道の駅、丹波おばあちゃんの里ってなってるけど、ネーミングとは裏腹に規模はかなりあるよ。クルマだってこんな時刻なのにあんだけ停まってるし、バイクも多いじゃないか。
「ここは舞鶴道と豊岡道のJCTとICがあって、ドライブとかツーリングの拠点みたいなところになります」
ここから丹波のドライブとか、ツーリングに出かけて行くって感じかも。まだ開店前だから自販機でコーヒー買って、生理現象も解消させてスタートだ。ここからは国道一七六号って言うけど、さっきは、
「ああ、重複国道です。国道一七五号は西脇から西舞鶴まで、国道一七六号は大阪から宮津までの路線ですけど、福知山まで同じ道になります」
ややこしいな。ややこしいと言えば地名もそうだ。この辺は春日町で、北に向かえば市島町になるはずだけど、
「兵庫の丹波は多紀連山を挟んで北側が丹波市、南側が丹波篠山市になっています」
市町村合併ってやつだろうけど、単位がデカ過ぎてどこだかわかんないじゃないの。それでも道の駅の休憩中になんとか鈴音の頭の中の地図はつながったぞ。ここからは北に走るのだけどカントリーロード。
峠道になったけど、これは兵庫と京都の境の塩津峠だって。哲也さんは良く知ってるな。その峠を下って来ると、なんとそこは福知山なんだ。初めて来た。これは都市だぞ。福知山の市街に入る手前のところで国道九号の高架の道に入ったけど、これがなんと片側二車線もある立派な道。
それだけじゃなく、両側にロードサイド店が軒を並べてるんだもの。西側に向かってるはずだけど、かなり続くな。なんとか市街地を抜けたかなってあたりで、
「あの橋を渡ったところで国道九号に向かいます」
左に入るってことみたい。渡ったのは由良川って言うらしいけど、ここも地図上ではポイントになるみたいで、まずさっき国道九号に入ったところで、あそこから国道九号、国道一七五号、国道一七六号の三重重複国道になってるとか。
それがこの交差点で国道九号が別れて、さらにもう少し先で国道一七五号と一七六号も分離するとか。
「少しややこしいのは、重複したどの国道が表示されるかにバラツキがあります」
それ困るじゃないと思ったけど、道路によっては国道同士だけではなく国道と県道の重複もあるんだとか。そのうちのどれが表示されるかは走っていて見る道路標示もあるけど、ナビ上とか地図上のものもあるよね。
これがバラバラだとナビ上で何号線を目指してるつもりなのに、道路案内に違うのが出て来たら動揺するし、最悪迷子にだってなりそうだ。最後は走って覚えるのが確実だろうけど、初見だったら困りそう。
それはそうとこれが国道九号か。国道もピンキリで、バイパスどころか自動車専用道になってるところもあるけど、一方で国道ならぬ酷道って揶揄されてるところもあるのは知ってる。それでも一桁国道は幹線道路のはずだけど・・・こんなものなのか。
「豊岡道が出来ましたから、クルマはそちらに流れてると思います」
なるほどね。走れるのなら高速とか自動車専用道を走ろうとするはずだよ。モンキーじゃ走れないのはコンチクショウだけど、そのお蔭で空いてるぐらいに思っておこう。殴っても蹴っても下道オンリーだもの。
「ここを右に入ります」
国道四二六号、豊岡、出石ってなってるな。さっきの酷道の話だけど、番数が高いほど可能性があるってどこかで聞いたぞ。とくに四百番台は要注意とか。
「兵庫県だったら四二九号が有名です」
へぇ、そうなのか。人呼んでシニクらしいけど、聞くだけで通りたくないぞ。それに見るだけで山に向かって行く道だよね。酷道じゃありませんように。
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