第12話(最終話)「CONTINUE? >YES」

納期の朝。

スタジオ・ピクセルのオフィスには、緊張と興奮が満ちていた。

今日は、ゲーム「ラブ・アルゴリズム」のリリース日。

3ヶ月間、全員が心血を注いで作り上げた作品が、ついに世に出る。

柑奈は、自分のデスクで、最終チェックを行っていた。

モニターには、ゲームの起動画面が映し出されている。

タイトルロゴ。

スタッフロール。

そして、ヒロインの笑顔。

全てが、完璧だった。

「……バグは、ない」

柑奈が、小さく呟いた。

何千回とテストプレイを繰り返し、何百件ものバグを修正した。

もう、致命的な問題は、一つも残っていない。

しかし、柑奈の心には、不安があった。

(――本当に、このゲームは、売れるのだろうか)

競合他社の恋愛ゲームは、すでに先月リリースされ、好評を得ている。

大手の開発力、潤沢な予算、有名声優の起用。

全てにおいて、相手の方が上だった。

(――私たちは、小さなインディーゲーム会社。勝てるのだろうか……)

その時、九条が、柑奈の隣に座った。

「不安ですか?」

「……少しだけ」

柑奈は、正直に答えた。

九条は、優しく微笑んだ。

「僕もです。でも……このゲームには、僕たちの全てが込められています」

「……」

「だから、きっと、伝わります」

九条の言葉に、柑奈は、小さく頷いた。

「……そうね」

二人は、手を繋いだ。

そして、リリースの瞬間を、待った。


午前10時。

ゲーム「ラブ・アルゴリズム」が、各プラットフォームで配信開始された。

オフィスには、全員が集まっていた。

氷室が、モニターを見つめながら、呟いた。

「さあ、始まったぞ」

最初の数分間は、静かだった。

ダウンロード数は、ゆっくりと増えていく。

10、20、50、100……

しかし、競合他社のゲームに比べれば、まだまだ少ない。

「……大丈夫かな」

美波が、不安そうに呟いた。

「大丈夫だ。まだ始まったばかりだ」

氷室が、落ち着いた声で答えた。

しかし、その表情には、わずかな緊張が浮かんでいた。


午後2時。

状況が、変わり始めた。

SNSで、「ラブ・アルゴリズム」の話題が、急速に広がり始めたのだ。

『このゲーム、マジで泣ける』

『ヒロインの心理描写が、リアルすぎる』

『恋愛ゲームの概念が変わった』

『シナリオが完璧。こんなゲーム、初めて』

次々に、高評価のレビューが投稿される。

ダウンロード数も、急激に増え始めた。

500、1,000、2,000、5,000……

「……すごい」

柑奈が、モニターを見つめながら、呟いた。

「本当に……売れてる」

九条も、信じられないという表情で、画面を見つめていた。

美波は、涙を流していた。

「良かった……本当に、良かった……」

田中も、笑顔で頷いていた。

氷室は、満足そうに笑っていた。

「やったな、お前ら」

その言葉に、全員が、拍手をした。


午後6時。

ダウンロード数は、10,000を超えた。

そして、レビューサイトでの評価も、軒並み高評価だった。

『ストーリー:10/10』

『キャラクター:10/10』

『グラフィック:9/10』

『音楽:10/10』

『総合評価:9.5/10』

競合他社のゲームを、上回る評価だった。

「……信じられない」

柑奈が、呆然と呟いた。

「本当に、僕たちのゲームが……」

九条も、信じられないという表情だった。

氷室が、全員に向かって、告げた。

「今夜は、打ち上げだ! 全員、居酒屋に集合!」

「おー!」

全員が、歓声を上げた。


夜、居酒屋。

スタジオ・ピクセルのスタッフ全員が、テーブルを囲んでいた。

氷室が、ビールジョッキを掲げた。

「乾杯!」

「乾杯!」

全員が、ジョッキをぶつけ合った。

そして、歓談が始まった。

「柑奈のデバッグがなければ、このゲームは完成しなかった」

「九条のシナリオが、本当に素晴らしかった」

「美波のキャラデザが、最高だった」

「田中の音楽が、涙を誘った」

全員が、互いを讃え合った。

柑奈と九条は、隣同士に座っていた。

二人は、時々、視線を交わし、微笑み合っていた。

美波が、柑奈に囁いた。

「ねえ、九条さんと、うまくいってる?」

「……うん。すごく」

柑奈は、照れくさそうに答えた。

「良かった。あんた、本当に幸せそうな顔してるよ」

「……ありがとう」

柑奈は、美波の肩を抱いた。

「美波は、田中さんと、どうなったの?」

「……まだ、告白してない」

美波は、少し恥ずかしそうに答えた。

「でも、今日、勇気を出すって決めたの」

「頑張って」

柑奈は、美波の手を握った。


打ち上げが終わり、スタッフたちは、それぞれ帰路についた。

柑奈と九条は、一緒に駅まで歩いていた。

夜の街は、静かだった。

街灯の光が、二人を照らしている。

「……今日は、最高の日でしたね」

九条が、柑奈に言った。

「うん。本当に」

柑奈は、嬉しそうに頷いた。

「でも……これからが、本当の勝負ですね」

「そうね。これから、アップデートも、DLCも、続編も考えないといけない」

二人は、笑い合った。

そして、九条が、柑奈の手を取った。

「柑奈さん」

「……なに?」

「僕、あなたと一緒に仕事ができて、本当に良かったです」

九条の真剣な表情に、柑奈の心臓が跳ねた。

「……私も」

「これからも、ずっと、一緒にいてください」

「……もちろん」

二人は、そっとキスをした。

駅前の人通りは少なく、誰も二人を見ていなかった。

長いキスの後、二人は、顔を離した。

「……明日から、また頑張りましょう」

「ええ。あなたと一緒なら、どんな困難も乗り越えられます」

二人は、手を繋いだまま、駅に向かった。


数ヶ月後。

「ラブ・アルゴリズム」は、累計ダウンロード数100万を突破し、大ヒット作となった。

各メディアでも取り上げられ、業界内でも高い評価を得た。

競合他社のゲームを超え、その年のベスト恋愛ゲームに選ばれた。

スタジオ・ピクセルは、一躍有名になり、経営危機も完全に脱した。

そして――

新作ゲーム『ラブ・アルゴリズム2』の開発が始まった。

オフィスでは、企画会議が行われていた。

「次のテーマは、『結婚』です」

氷室が、ホワイトボードに大きく書いた。

「前作が恋愛の始まりだとしたら、今作は恋愛のゴール。結婚までの過程を描きます」

スタッフたちは、真剣に聞いていた。

「柑奈、九条、お前たちがメインだ。頼んだぞ」

「はい」

二人は、同時に答えた。

しかし、企画の詳細を詰める段階で、二人は、激しく対立した。

「結婚イベントは、もっと現実的にするべきよ! プロポーズの場所も、レストランとか、普通の場所で!」

柑奈が、強く主張する。

「いえ、それでは夢がありません! 夜景の見える展望台とか、ロマンチックな場所の方が、プレイヤーは喜びます!」

九条も、譲らない。

「現実離れしたシチュエーションは、共感を得られない!」

「ゲームなんだから、現実より夢を優先すべきです!」

二人の口論は、延々と続いた。

美波が、呆れたようにため息をつく。

「あんたたち、本当に付き合ってんの?」

その言葉に、スタッフ全員が笑った。

しかし、誰も見ていない机の下で、二人は、しっかりと手を繋いでいた。

口では喧嘩していても、心は通じ合っている。

それが、二人のスタイルだった。


会議が終わり、柑奈と九条は、オフィスの給湯室で、コーヒーを淹れていた。

「……さっきは、ごめんなさい」

柑奈が、小さく謝った。

「いえ、僕も言いすぎました」

九条も、頭を下げた。

二人は、顔を見合わせて、笑い合った。

「でも、あなたの意見も、一理あるわね」

「あなたの意見も、納得できます」

二人は、コーヒーカップを持って、窓際に立った。

外は、晴れていた。

東京の街が、広がっている。

「……私たち、変わったわね」

柑奈が、ぽつりと呟いた。

「ええ。以前は、こんな風に、意見を尊重し合うことなんて、できませんでしたね」

九条も、頷いた。

「あなたと出会って、私、変わった」

「僕もです」

二人は、コーヒーを飲みながら、しばらく景色を眺めていた。

そして、九条が、ぽつりと言った。

「……柑奈さん」

「なに?」

「僕、あなたのこと、ずっと好きです」

その突然の告白に、柑奈は、顔を真っ赤にした。

「……何言ってるのよ、急に」

「いえ、ただ、伝えたくて」

九条は、照れくさそうに笑った。

「……私も、ずっと好きよ」

柑奈も、小さく笑った。

二人は、そっと手を繋いだ。

そして、オフィスに戻った。


半年後。

「ラブ・アルゴリズム」のアニメ化が決定した。

大手アニメ制作会社が制作を担当し、有名声優がキャストに決まった。

スタジオ・ピクセルのオフィスには、アニメ制作スタッフが訪れ、打ち合わせが行われた。

「原作の雰囲気を大切にしながら、アニメならではの表現を加えたいと思います」

アニメ監督が、熱く語った。

「ヒロインの心理描写を、映像と音楽で表現します。きっと、素晴らしい作品になります」

柑奈と九条は、興奮していた。

自分たちが作ったゲームが、アニメになる。

夢のような話だった。

「僕たちの作品が……アニメに……」

九条が、信じられないという表情で呟いた。

「……すごいわね」

柑奈も、同じように呆然としていた。

氷室が、二人の肩を叩いた。

「お前たちが頑張った結果だ。誇っていいぞ」

「……ありがとうございます」

二人は、深く頭を下げた。


打ち合わせが終わり、柑奈と九条は、会社を出た。

夕暮れ時の街は、美しかった。

オレンジ色の空が、ビルを照らしている。

「……今日は、記念日ね」

柑奈が、九条に言った。

「ええ。アニメ化決定の日です」

「でも、もう一つ、記念日があるわよ」

「……?」

九条が、首を傾げた。

柑奈は、少し照れくさそうに言った。

「……今日で、私たちが付き合って、ちょうど1年」

その言葉に、九条は、目を見開いた。

「……本当ですか」

「忘れてたの?」

「いえ、覚えていましたが……まさか、あなたが言い出すとは」

九条は、嬉しそうに笑った。

「私だって、記念日くらい覚えてるわよ」

柑奈も、笑った。

「……じゃあ、お祝いしましょう」

「どこに行く?」

「僕に、任せてください」

九条は、柑奈の手を取った。

そして、二人は、歩き始めた。


九条が連れて行ったのは、都内の展望台だった。

夜景が、一面に広がっている。

東京タワー、スカイツリー、レインボーブリッジ。

全てが、美しく輝いていた。

「……綺麗」

柑奈が、感嘆の声を上げた。

「ええ。ここは、僕が一番好きな場所です」

九条は、柑奈の隣に立った。

二人は、しばらく、夜景を眺めていた。

沈黙。

しかし、それは、心地よい沈黙だった。

そして、九条が、ぽつりと言った。

「……柑奈さん」

「なに?」

「僕、あなたと出会えて、本当に良かったです」

九条の声は、真剣だった。

「あなたがいなければ、僕は、今でもシナリオ通りの人生を生きていたでしょう」

「……」

「でも、あなたと出会って、僕は変わりました。予測不能な出来事を楽しめるようになりました。失敗を恐れず、挑戦できるようになりました」

九条が、柑奈の手を取った。

「全て、あなたのおかげです」

柑奈の目に、涙が浮かんだ。

「……私も、同じよ」

柑奈は、九条を見つめた。

「あなたと出会って、私も変わった。バグを憎むことをやめて、不完全な自分を受け入れられるようになった」

「……」

「あなたがいなければ、私は、今でも一人で、バグと戦っていたでしょう」

柑奈の涙が、零れ落ちた。

「ありがとう。あなたと出会えて、本当に良かった」

九条は、柑奈の涙を、優しく拭った。

そして、ポケットから、小さな箱を取り出した。

「……柑奈さん」

「……え?」

柑奈が、驚いて箱を見つめた。

九条は、その箱を開けた。

中には、シンプルで美しい指輪が入っていた。

「僕の人生というシナリオに、もうバグはいりません」

九条の声が、震えていた。

「あなたという、最高の仕様だけがあればいい」

九条は、跪いた。

「穂積柑奈さん。僕と、結婚してください」


柑奈の目から、大粒の涙が零れ落ちた。

言葉が、出なかった。

ただ、頷くことしかできなかった。

「……はいっ!」

その言葉を聞いた瞬間、九条の顔に、笑顔が広がった。

彼は、立ち上がり、柑奈の左手を取った。

そして、指輪を、そっとはめた。

ぴったりだった。

「……ありがとう」

九条が、柑奈を抱きしめた。

柑奈も、九条を強く抱きしめた。

二人は、しばらく、そのままでいた。

夜景を背に、抱き合う二人。

それは、まるで、映画のワンシーンのようだった。


しばらくして、二人は、顔を離した。

柑奈が、指輪を見つめながら、呟いた。

「……これ、いつ買ったの?」

「3ヶ月前です」

「そんなに前から!?」

「ええ。ずっと、タイミングを計っていました」

九条は、照れくさそうに笑った。

「今日が、一番いいタイミングだと思って」

「……ずるい」

柑奈は、涙を拭いながら、笑った。

「あなた、本当に、ロマンチストね」

「あなたから学びました」

二人は、笑い合った。

そして、再び抱き合った。

「……私たち、結婚するのね」

柑奈が、九条の胸に顔を埋めながら呟いた。

「ええ。これから、ずっと一緒です」

「……嬉しい」

「僕もです」

二人は、夜景を見つめながら、未来を想った。

これから、どんな人生が待っているのだろう。

どんな困難があるのだろう。

でも、二人なら、きっと乗り越えられる。

バグだらけでも。

シナリオ通りにいかなくても。

二人なら、最高の人生を、築いていける。


1年後。

スタジオ・ピクセルのオフィスでは、新作ゲーム『ウェディング・アルゴリズム』の開発が、最終段階に入っていた。

このゲームは、「ラブ・アルゴリズム」の正式な続編で、主人公とヒロインが結婚するまでの物語を描いている。

企画会議室では、柑奈と九条が、最終チェックを行っていた。

「……完璧ね」

柑奈が、モニターを見つめながら呟いた。

「ええ。バグは、一つもありません」

九条も、満足そうに頷いた。

「このゲーム……私たちの経験が、たくさん入ってるわね」

「ええ。プロポーズのシーンは、あの夜の展望台がモデルです」

「結婚式の準備で喧嘩するシーンは、私たちそのものね」

二人は、笑い合った。

実際、柑奈と九条は、数ヶ月前に結婚式を挙げていた。

小さな式だったが、スタジオ・ピクセルのスタッフ全員が参列し、温かい式になった。

美波は、涙を流しながら、「本当におめでとう」と言ってくれた。

田中も、心のこもった祝辞を述べてくれた。

氷室は、「お前ら、やっとゴールしたな」と笑っていた。

そして今、二人は、夫婦として、一緒に仕事をしている。

「……私たち、変わったわね」

柑奈が、ぽつりと呟いた。

「ええ。以前の僕たちは、想像もできませんでしたね」

九条も、頷いた。

「でも……変わらないこともあるわ」

「……?」

柑奈は、九条を見つめた。

「私、あなたのこと、ずっと好きよ」

その言葉に、九条は、顔を赤くした。

「……僕もです。ずっと、好きです」

二人は、そっとキスをした。


夕方、オフィス。

全員が集まって、最終確認を行っていた。

「よし、これで完成だ」

氷室が、満足そうに言った。

「明日、リリースする。お前ら、よく頑張ったな」

「ありがとうございます」

全員が、頭を下げた。

「さあ、今夜は打ち上げだ! 全員、居酒屋に集合!」

「おー!」

全員が、歓声を上げた。


打ち上げの後、柑奈と九条は、二人で夜の街を歩いていた。

桜並木の下。

満開の桜が、月明かりに照らされて、美しく輝いている。

「……綺麗ね」

柑奈が、桜を見上げながら呟いた。

「ええ。でも、あなたの方が綺麗です」

九条の言葉に、柑奈は、顔を赤くした。

「……またそういうこと、さらっと言う」

「本当のことです」

二人は、笑い合った。

そして、九条が、立ち止まった。

「柑奈さん」

「なに?」

「僕、あなたと結婚して、本当に幸せです」

九条の声は、真剣だった。

「これからも、ずっと、一緒にいてください」

「……当たり前でしょ」

柑奈は、九条の手を握った。

「私たち、もう夫婦なんだから」

「ええ」

二人は、抱き合った。

桜の花びらが、風に舞っている。

まるで、二人を祝福するかのように。


その後、二人は、自宅に帰った。

新婚の二人が暮らすアパートは、小さいが温かかった。

リビングには、二人で選んだ家具が並んでいる。

キッチンには、二人で料理した痕跡がある。

寝室には、二人で眠るベッドがある。

全てが、二人の愛で満ちていた。

柑奈は、ソファに座って、ノートパソコンを開いた。

「……ちょっと、仕事の続きをするわ」

「今日は、もう休みましょう」

九条が、柑奈の隣に座った。

「でも……」

「明日でいいでしょう」

九条は、柑奈のパソコンを閉じた。

「……そうね」

柑奈は、笑って、九条に寄りかかった。

二人は、しばらく、そのままでいた。

テレビも、音楽もない。

ただ、静かな時間。

しかし、それが、一番幸せだった。

「……ねえ」

柑奈が、ぽつりと呟いた。

「なんですか?」

「私たちの人生、これからどうなるのかしら」

「……分かりません」

九条は、正直に答えた。

「でも、きっと、バグだらけでしょうね」

「……そうね」

柑奈は、笑った。

「でも、それでいいわ」

「ええ。それが、僕たちらしいです」

二人は、手を繋いだ。

そして、未来を想った。

これから、どんな困難が待っているのか。

どんな喜びが待っているのか。

全ては、分からない。

でも、それでいい。

二人なら、どんな未来も、楽しめる。

バグだらけでも。

シナリオ通りにいかなくても。

二人なら、最高の人生を、築いていける。


翌朝。

スタジオ・ピクセルのオフィス。

柑奈と九条は、相変わらず企画会議で口論していた。

「次回作は、SFアクションゲームがいいわ!」

「いえ、ファンタジーRPGの方が、市場性が高いです!」

「あなたの市場分析、古いわよ!」

「あなたのデバッグ、完璧主義すぎます!」

美波が、呆れたようにため息をつく。

「あんたたち、結婚したのに、全然変わってないじゃん」

その言葉に、全員が笑った。

しかし、誰も見ていない机の下で、二人は、しっかりと手を繋いでいた。

口では喧嘩していても、心は通じ合っている。

それが、二人のスタイルだった。

氷室が、満足そうに笑った。

「お前ら、最高のチームだよ」

柑奈と九条は、顔を見合わせて、微笑んだ。

そして、心の中で、同時に思った。

柑奈(――この恋は、バグだらけ。でも、最高に幸せ)

九条(――この恋は、シナリオ通りじゃない。でも、最高に楽しい)

二人の物語は、まだまだ続く。


画面に、文字が浮かぶ。

CONTINUE?

>YES

二人は、これからも、バグだらけの人生を、共に歩んでいく。

予測不能で、シナリオ通りにいかない、最高の人生を。

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ラブ・アルゴリズム ―バグだらけの恋愛開発プロジェクト― 八つ足ケンタウロス @yatsuashi

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