概念操作で異世界無双ハーレム ~チートもだりぃし、おまえら全部即改変だから~
犬上義彦
第1話 転生と初改変(1-1)
俺の人生は、いつも暗い部屋の隅っこで終わっていた。
佐藤真一、名前だけSSのオッサン三十八歳。
引きこもり歴二十五年。
何をやるのもめんどくせぇ。
寝るのすらめんどくせぇ。
外に出る理由なんて、コンビニの新作カップ麺くらいしかない。
今日もいつものように、モニターの青白い光に顔を照らされながら、動画サイトの自動再生に身を任せていた。
「はあ……もう深夜か。腹減ったな」
買い置きはないし、冷蔵庫も空。
仕方なく財布をつかんで、久しぶりに外に出る。
夜の街は静かで、街灯がオレンジに道を染める。
信号が青に変わって一歩踏み出す。
――その瞬間だった。
ブオオオオオン!!
巨大なトラックが、まるで世界が歪むような轟音を立てて突っ込んできた。
ブレーキの音も、クラクションも、何も聞こえない。
体が宙を舞い、コンクリートに叩きつけられる衝撃。
運転席のおっさんと目が合った瞬間、視界が真っ赤に染まり、すぐに真っ暗に落ちた。
あーぁ……めんどくせぇ。
死ぬのも、めんどくせぇわ。
ま、二度と起きなくていいんだから、ありがてえか。
――次に目覚めたとき、俺は「浮いて」いた。
周囲は果てしない白。
雲みたいなふわふわした床。
重さも、痛みも、匂いもない。
魂だけの存在って、こんな感じなのか。
「え、えっと……ここ、どこだよ?」
天国?
そんな都合のいいことねえか。
ていうか、天国でも起きなきゃなんねえのか。
それもめんどくせぇな。
だったら地獄でもいいのに。
すると、白い空間の中心に、光の粒が集まり始めた。
ぽん、ぽん、ぽん、と三つの音。
光が弾けて、三人の女の人――いや、女神が現れた。
一人目は、金髪ポニーテールの元気娘。
白と金のフリルドレスがふわふわ揺れて、背中には小さな羽根の飾り。
青い瞳がキラキラ輝き、手に持ったハープがポロンポロンと鳴る。
「やっほー! 転生者さん! はじめまして! 私アテナ! よろしくねっ!!」
彼女はぴょんと跳ねて、魂となってふわふわする俺の肩にぽんっと手を置く。
魂なのに温かくて、ふわっとした感触が伝わる。
だけど、一言一言いちいちビックリマークがつく話し方がうざい。
「キミの魂バグりすぎててさ! 普通の転生無理だったから! 特別に“概念体”にしちゃった! えへへ、責任取ってね!」
責任ってなんだよ。
勝手に押しつけんなよ。
次に、赤髪のロングヘアが炎のように揺れる女神。
橙色の瞳がくっきりした二重まぶたでいたずらっぽく細まり、赤と黒のドレスは胸元が大胆。
腰の周りを小さな炎の玉がくるくる回ってる。
「ふふーん、私、フレア。炎と情熱の女神だよぉ」
フレアはふわふわな俺の腕に軽く絡みつき、耳元で熱い息を吹きかける。
「世界救うとかぁ、そういうのどうでもいいからねぇ。代わりに『概念操作権限』プレゼントぉ。好きに遊んでぇ、好きに壊してぇ、好きに作っちゃってぇ。私ぃ、応援してるからぁ」
言ってることはなんかすげえんだけど、語尾がだらしなくて、いちいちイラッとくる。
最後に、銀髪ショートカットのクールビューティー。
紫の瞳が星空みたいに深く、青と銀のドレスには星の刺繍が無数に輝く。
頭に小さなカチューシャみたいな冠。
静かに微笑みながら、指先でほわほわした俺の頬をそっと撫でる。
ひんやりして、心地いい。
「……ルナ。女神……夜と静寂の」
短い言葉。
でも、その声は鈴みたいに澄んでいる。
「即座に世界法則……実現。制限なし……君が思ったこと。見ていたい……少し」
こいつくらいはちょっとはまともかと思ったのに、なんで言葉がひっくり返ってんだよ。
微妙な間もイラッとくるし。
そんな女神が三人とも、俺のまわりをふわふわ浮かんでる。
アテナはくるくる回って、フレアは炎のハートを指で描いて、ルナは静かに微笑む。
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