TS召喚獣と落第魔術師~サブキャラ無双で異世界を救う!

𱁬 一(タイトハジメ)

プロローグ

 「あの……」

 目を開くと、一人の少女が覗き込むようにこちらを見下ろしていた。

 黄色の瞳に、薄い桃色の唇。長く綺麗な薄青色の髪が俺の鼻をふわりとくすぐる。後頭部には柔らかな感触。どうやら、膝枕をされている状態のようだ。

 少女はローブを身にまとっていた。現代では見かけない古めかしい服装だ。

 こんなところで、コスプレして何をしているのだろうか。

 寝ぼけた頭でそんなことを考える。

 ちらりと横を見やる。あたりには背の高い木々が鬱蒼と生い茂っていた。どこかの森の中のようだが、家の近くにこんな場所あったかな……。

 俺は自分がどんな状況に置かれているのか分からず、不安が胸をよぎり始めた。

 少女が口を開く。


 「あの、あなた、召喚獣……なんですよね?」

 「…………え?」


 少女が何を言っているか俺にはわからなかった。 

 召喚獣。

 意味は分かる。よくゲームなどで出てくる、魔法を使って呼び出す、自分の代わりに戦ってくれる存在。

 ただ、『召喚獣なんですよね?』という少女の言葉が、あたかも俺自身が召喚獣であるかと聞いているように聞こえて混乱する。


 「グォォォォォォォォ!」


 答えあぐねていると、何処からか獣の咆哮が響き渡る。距離はそれほど遠くない。

 俺は驚き、咆哮が聞こえてきた方向を見ようとすると、少女が俺の顔を両手で包む。ぐっと力を込め、俺が別の方向を向けないようにする。

 必然的に、俺は少女と見つめあう形になる。

 少女は焦ったように、しかし、意を決した表情でこう言った。


 「し、失礼します!」


 少女の顔がこちらに近づいてきたかと思うと、次の瞬間、俺と彼女の唇が重なる。

 こうして俺は、少女――アナスタシアとの衝撃的な出会いを果たしたのだった。

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