お疲れ様刑事
さとちゃんペッ!
お疲れ様刑事
「お疲れ様刑事」
あたしは今日もカクヨムで読み専中。
好きな作品に出会えるのって奇跡よね。
ああいうのには飽きてしまったし、
こういうのにはついていけない。
撮影の合間にお弁当を食べながら、スマホで読む。
いいんだな、これが。
あ、申し遅れましたが、あたしは人気俳優・佐藤あかり。
ピコン!
通知に来た「近況ノートを更新」に飛びついた。
あたしの好きな作家さんの久しぶりの長編だ。
なんと、異世界転生を卒業して、現代ミステリーに挑戦している。
うわあ、楽しみ~。
いきなり死体が転がり、
イケメン刑事がとんでも女とバディと組む。
ん? バディの名前があたしじゃん。
「佐藤あかり」
で、あかりはすっごく太っていて食いしん坊で、イケメン刑事の足手まといになっている。
ひどいな……。
しかし、黒ずくめの犯人グループのアジトに潜入したとき、二人の刑事は冷凍庫に閉じ込められ、このままでは命が危ないってときに、太ったあたしの体温でイケメンを温め、助けが来るまで命をつないだ。
イケメンはあかりに恋をする。
いいぞいいぞ!
1話だけでなく2話も3話もイケメンは、あかりに思いを寄せるって、いい話~。
はっきり言って、気に入った。
あたしは自分で言うのもなんだけど、ぽっちゃりかわいい。
太っていることを使って売れている。
「好きな話があったら持ってきて」ってプロデューサーに言われていたんだった。
この話、持って行こう。
そして、いろいろあって、この話が書籍化・コミカライズ・アニメ化された。
まあ、あたしのおかげだけどね。
そして、ドラマ化。撮影。
あたしは佐藤あかり役。
芸名が役名だなんて、すごい。話題になった。
タイトルは「お疲れ様刑事」に代わっている。
ドラマ化された脚本を読んでみると……イケメン刑事が恋をするのは、あかりの同僚ひかりだった。
あかりはイケメン刑事を温めてあげたり、代わりにぶたれたり、代わりに海に捨てられたりする。
ひどい目に遭うもののちっとも報われない太った刑事、あかり。
それを見て、美人刑事がイケメン刑事と腕を組み、「お疲れ様~お先に失礼」と帰っていくのがお決まりのラストシーンだ。せつない。視聴者はそこで報われないあかりに「お疲れ様、刑事」と思うのだという。
改悪だ!
あたしは、クレームをつけた。
「こんなこと、ひどすぎる。作者の気持ちを考えて!」
「ドラマ化する時、ストーリー改変はあることなんです」
「お疲れ様刑事」
今日もかわいい俳優が、あたしに向かって「お疲れ様~」と言って先に帰っていく。
これからあたしは、ぼこぼこに殴られるシーンを撮る。
ひどくないですか?!
お疲れ様刑事 さとちゃんペッ! @aikohohoho
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