第13話もういい加減にして欲しい

「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。兄様が紹介したい人がいるから、て言ってくれてるの」

「誰!?」

何故かシルビアが鋭い瞳で聞いてきた。

余程私の事が気になるのだろうか。

「さあ?誰かは聞いていないわ。でも、友人にオーリス様とジムニー様がいたから頼んでみてもいいかもと思っているわ」

狡い事を言っているのは百も承知だ。2人が学園で人気があると、セリカとステラから聞いた。

急にシルビアの顔が悔しそうになり、なんだか睨んできた

「誰?」

アルファードが聞いてきたのをふんわりと微笑んで答えた。

やはり、覚えていないのね。

アルファードは国務関してはかなり昔の事を勉強し、今と照らし合わせ妥協点、時代にあった答えを出してくれる。

だが、

人を覚えるのが極端に苦手なのだ。

顔を覚えるのも、名前を覚えるの苦手。

その点については私は、得意というよりも、楽しい。

名前、と言うよりもその方の性格、性質、生業、を知るのが大好きだ。

人の人生はその方だけの、オンリーワン、だ。

感情も、思想も、捉え方も、全てが面白い。

そう思うと、自然にその方の名前も素性も覚え、また、その方の国の事も知りたくなる。

ただ・・・自分で難点と言えば自国の貴族に関して

は浅く広く、程度しか覚えがない。

勿論、その方の爵位や立場はきちんと理解しているが、他国の方ほど、性格や事業の内容までは把握していない。

正直興味がない。

だって、自国のことに関しては陛下やアルファードや宰相様がするべきであって、私が手出しする範囲ではない。

そうなると他国のに目がいくのは、至極当然だし、他国を知る事はとても楽しい。

「オーリス様はディグランセリア公爵令息よ。ジムニー様はヴァンエルトレイア侯爵令息よ」

正式な名前を言って、やっとアルファードは得心を得たようで、満足そうに頷いてくれた。

「そのおふたりだから問題ないと思うけど、まだ、先の話だものどうなるか分からないけれど、自分なりに考えているわ」

にっこりと微笑み答えた。

「成程ね。カレンに困ったことがあったら、私にすぐ言って欲しいな。幼なじみだろう」

幼なじみ。

ほら。

なんて、棘のある内容をさらりと言うんだろう。

「王子が幼なじみ、なんて、私だけだものね。なんだか特別ね」

「カレンの為ならなんだってしてあげるよ。これまで色々私の事を補佐してくれたら当然だよ。シルビアの努力は父上がとても認めているからね。そのお陰で、他国の要人の方々を招いた時に皆様満足してくれていた」

とても讃賞してしてくれるのは嬉しいが、一言一言に、シルビアの表情が険しくなる。

なんなく、理解した。

きっと、陛下が私を婚約者に戻したくて、色々言っていいるのだろう。

素直なアルファードだ。

その助言を、素直にシルビアに言ったのだろう。

陛下が直球的に、カレンを婚約者に戻したい、とは言わないだろうが、私がどれだけ必要なのか切に説明したのだろう。

そこに含まれた陛下の気持ちをアルファードは恐らく気づいてはいないだろうが、私の事を褒め称える内容。

つまり、私とシルビアが比べられたのだ。

それは、とても、いやな気分になるだろう。

もし、私がシルビアの立場なら不安に駆られる。

不安の表現はそれぞれ違うから、シルビアの表現方法は、

その女を貶める、

的な事なのだろう。

私なら・・・我慢して終わるかな。

けれど、それはそれでシルビアの愛情表現、嫉妬、だけれど、正直それをぶつけられたら、いい気分にはならない。

「ありがとう。でも、もう私はアルファード様の婚約者ではないわ。例え幼なじみとしても立場が違いすぎる。シルビアの事だけ考えてあげて」

「そうですわね、今のお話しなら、私達が心配しなくてもカレンはひとりで上手くやっていけますわぁ」

なんだか含みを感じる言葉を言ってきた。

「そうだけど・・・心配なんだ。いつも一緒に居たからね、そばにいないとなんだか変な気分になるんだ」

やめてよ、その妙な言い方。

アルファードか何も考えてないだけに、余計に変な空気になる。

ほら、シルビアの顔がますます恐くなる。

「アルファード様ぁ・・・そこまで心配しなくても良いですよぉ。だあって、その・・・言いにくいけれど・・・カレンはやっぱり婚約解消したかったんですわぁ」

こっちはこっちでは、何を言いたいんだ?

早く帰りたい。

いや、もう逃げたい。

「どういう事?」

「だあってぇ、婚約解消してすぐに上級貴族のおふたりのお名前が上がるなんて、既に目をつけていた、という事じゃありませんかぁ?」

「兄様の友人だからよ。それに、それ程話をした事ないわ」

「まあ!」

今度は大袈裟さなほど声を上げた。

「対して知りもしないのに、おふたりの名前を上げるなんて、非常識じゃありませんか?それだとまるで知ったかぶりの最低な令嬢ですわぁ。ねえ、アルファード様」

「あ・・・まあ、それはそうだが、カレンはそんな事する女性じゃないよ」

「あら、でも、今仰ったじゃありませんか。対しては面識もないのに、アルファード様の誕生日パーティーという国を上げての大事な催しにパートナーとしておねがいする、と。そのように勝手に言うのは、大変おふたりに失礼だと思いませんかぁ?」

はあ・・・。ああ言えばこう言う。

こんなに面倒に人だったのね。

「まだ、正式にお願いするとは言ってないわ。それに無理に探さなくても、別に私は兄様がパートナーでも問題ないもの」

「上手く、逃げましたわね。まぁ、言うのは勝手ですものねぇ。少し、幻滅ですわぁ。カレンはとても真面目な方と思っていたのに、そんなにズル賢い方だったのですね。本当は、お兄様のご友人でもなんでも無い のじゃありません?ただの妄想では、無いのですか?」

「シルビア、それは失礼だよ。カレンはそんな人じゃない」

「でもぉ、証拠がないのなのなら、後からでもなんでも言えますわぁ。うまぁく知ったかぶりして、パートナーにはお断りされましたのぉ、と言えば問題ありませんわぁ。わざわざ私達が、おふたりにカレンの事を本当にご存知なの、とは確認しませんものぉ」

「まあ・・・そうだね。カレン・・・その、君はそういう事考えていたの?」

呆れる。長く一緒にいて性格も知っていると思っていたのに、こんなに安易に他の人の言葉を信じるのだ。

恋は盲目、とは言う素晴らしい言葉があるが、

百年の恋も一時で冷める、と言う素晴らしい言葉もあるわ。

「あら!」

急に大きな声を出し、嫌な笑いを見せた。




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