第46話 久々の魔物狩り祭り

 例の神殿を目指しているのだが、道中今までよりも強い魔物が出てくるようになった。

 出現頻度や数も増えてる気がする。

 それに魔物同士でも連携をとっているようにも見える。

 物理攻撃力が強い魔物と回復魔法を使える魔物が一緒に現れてみたりとか。


 だけどそんなのは全くもって関係なし。

 魔物の群れで塞がれた道はほぼ一瞬で切り開かれるから。

 あの三人の戦いっぷりは、ものすごく安心して見学していられる。


 レナードさんとアルガーさんが戦いに加わってから、オレとこやきは一度も戦闘へ参加をしていない。

 空叶が劣勢になることなんてないからね。

 けど、別問題として自分、ちょっとだけウズウズしてきています。


 レナードさんとアルガーさんのスキルと魔法の繰り出し方を見て、一人魔物狩り祭りを開催したい欲がふつふつと湧き上がってきてるよ。

 いや、別に自分戦闘狂じゃないから、多分。

 自分のチートステータスにある様々なスキルや魔法を使うとどんな感じなのか、知りたいだけなんだから。

 

 それに、やりたいことはやったほうがいいよね。

 やらなかった後悔よりもやった後悔のほうが断然良い。


「ねえ、こやき、お願いがあるんだけどー」

「どうしたの? もしかして魔物狩り祭りでもしたくなった〜?」

「よく分かったね。流石オレの相方」

「何となくそんな気がした〜。あれでしょ〜、レナードさんとアルガーさんの戦いを見て刺激受けちゃった感じでしょ〜」

「そうなんよー、自分が発動させたことのないスキルや魔法を使用してるとこ見たら火がついたっていうかー」

「いいんじゃないかな〜。やりたいことはやっといたほうがいいからね〜。こっちのことはうちに任せて〜。夕ご飯までには戻ってきてね〜」

「オッケー、こやきサンキュー!」


 こやきの了解を貰ったので早速行くことにした。

 いつだったかこやきから、ズガーンとかドガーンとかって自然破壊的な音がしてたよって言われたことがある。

 魔物を呼び寄せるスキルを使うから、どうしても激しい戦闘になっちゃうんだよね。


 レナードさんたちもいるし、今日はかなり離れた場所で行うことにしよう。





「天宮くん戦闘お疲れ様〜」

「あれ、こやきさん、おうりは?」

「おうりはだいぶ溜まってきてたみたいで〜、発散する為にいつものアレに出かけたよ〜」

「溜まってって……、いつものアレ……?」

「天宮くん、何で顔赤くなってんの? お水飲む? 冷たいのでいいかな?」

「あ、ありがとう。……いつもの? ……アレって……? ……それなら俺で、……俺で発散すればいいのに……」

「天宮くん何かした? おうりのことは心配しなくても大丈夫だよ〜。久しぶりに魔物狩り祭りしに行っただけだから。夕ご飯までに帰るようには言ったし、特に問題ないよ」

「……えっ、あ、あー、魔物狩りね! あはは、そ、そうなんだ。いつものアレなんだね!」

「うん。……変な天宮くん」







「ふぅー、めっちゃスッキリしたー! やっぱり定期的に開催しないとねー」


 一人魔物狩り祭りを終えて一休みしていた。

 辺り一面には無数の魔物の残骸が広がっている。

 一応全体的に浄化の魔法を掛けてあるので、時間経過と共にそれらは自然消滅していくだろう。


 浄化の魔法を掛けないで死骸をそのまま放置すると、腐敗して悪臭や環境汚染などの様々な悪影響を引き起こすだけだからね。

 魔物狩り祭り実行委員としては、後始末もしっかり行ってこそ、祭りの成功と言えるんじゃないかと思う。


「さて、回収スキルで石もしっかり集めれたし、そろそろ戻ろうかなー……、って、うわわわっ!」


 突然森の奥から空気が裂けるような音と共に、魔力で凝縮された無数の鋭利な氷の塊がこちらに放たれてきた。

 瞬時に身体が動き、避けると同時に結界魔法で防御をし、更に生成していた長剣に高密度の炎を纏わせて円を描くように一閃する。


 剣から放たれる炎が氷の塊と衝突するたびにジュッ、ジュッっという音をさせて、連鎖的に水蒸気の爆発が発生し、氷の弾幕を全て無力化した。


「なんなんー? 見つからないように気配消してるようだけどさー、そこにいるんでー、しょっ!」


 気配察知スキルで分からせないように気配を遮断させてるみたいだけど、分かっちゃうんだよねー。

 チートステータス持ちなのでー。

 とりあえず敵意を向けて攻撃をしてきた奴に対し、狙いを違わず雷撃魔法をぶち込んでみる。


「ぐあぁっ!!」


 雷光の速さで青白い稲妻が相手に突き刺さった。

 バチバチという音と共に全身を麻痺させることに成功。

 敵の動きが止まったのを見逃さず、接近して剣を突きつける。


「いきなり攻撃してくるなんてー、一体どこのどちらさんですかー?」


 魔法攻撃をしてきたのは地面に片膝をついている黒い鎧の人だった。

 魔物特有の気配がしないのはなんでなんだろう。

 前に何度か遭遇した鎧の魔物とも全然違う。あれらには中身がなかった。


 この黒い鎧には中身がある、というか中に人の気配がする。

 ただ、兜で顔は分からない。


「あのー、もしかして貴方は生きてる人間ですかねー?」

「…………」

「き、聞こえてますかー?」

「…………」


 いやいや、こんだけ話しかけてるのに何か喋らんかい!

 電撃魔法で麻痺させたけど、声は出せるはずだよね。

 

 あ、そうだ。

 手っ取り早い方法として、ステータスを見てみよう。

 攻撃魔法を使えるならステータスは絶対あるからね。


 早速解析スキルを発動してみる。


「うそおぉぉ!? えっ!? ちょっと待って!? マジなん!?」

「……?」


 この人のステータスを見て驚愕する。

 だってだって、肩書きが『元勇者』って書いてあるよー!

 これ、驚くなっていう方が無理でしょー!


 『元勇者』ってことは、前に勇者だった人ってことだよね。

 何でこんなところにいるの!?

 どうして元なんてついてるの!?

 意味が分からなすぎて知恵熱が出そうだよ!


 とりあえず居なくなられると困るので、捕縛魔法かけておこう。


「えーっと、元勇者さん、でいいのかな? ちょーっと話を聞きたいのですがー」

「…………」


 ううっ、だんまりされるのは苦手だ。

 オレだけじゃこの人の対応無理よりの無理。

 こやきにメールして、ここへ来てもらおう。

 こやき、ヘルプミー!






「おうり、お待たせ〜。天宮くんはレナードさんたちに任せたから大丈夫だよ〜。その人が『元勇者』って人?」

「こやきー、待ってたよー。そうそう、ステータス見たら肩書きにそう書いてた」


 こやきにメールで助けを求めると、移動魔法で直ぐに来てくれた。

 

「本当だ〜、レベルや能力値も高いね。それに修得してるスキルや魔法も勇者が修得するものばっかり〜」

「じゃあ肩書きはその通りなんだね。でもなんで元が付いてるんだろう? 色々聞きたいけどこの人一言も喋らないんだよー。雷撃魔法を受けた時には、ぐあぁって声出してたのに」

「うーん、困ったね〜。何か話せない理由があるとしたら……」

「あ、ひとつ思いついたよ!」


 思いついた内容をこやきへメールで送る。

 もしかしたらこの『元勇者』って人、誰かに監視されてたりするんじゃないかな?

 だからずっと黙ったままなのかもしれない。


 だとしたら、試したい魔法がある。

 前にこやきが宿屋でギター練習の時に使った遮音の結界魔法を張れば、安心して話してくれるかも。


「多分だけどね。こやき、やってみようよ」

「いいアイデアだね〜。オッケーだよ〜」

「どうせならダブルがけで試してみよう。それじゃあ早速発動させようか」

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