[起] 西暦2007年 11月 その3

 ボクはゲームきを、もっていない。


 ほしくても、おかあさんはむりっていった。

 おかあさんをこまらせたくないので、ボクは、ほかのことをしてあそぶ。


 こうみんかんに行けば、パソコンもあって、インターネットもみれた。

 こうみんかんには、ボードゲームもあった。


 だから、こうみんかんのめいぼには、ボクのなまえがたくさんある。


 「おちゃ」が、けがをなおすはなしは、ほんとうだった。かてきん?がさっきん、してくれるらしい。しょうどくと、同じみたいだった。

 ほんごうさんのおばあちゃんは、ものしりだとおもった。


 インターネットと本でしらべれば、いろいろなことがわかる。

 こうさとびのやりかたや、ボールをまっすぐになげるやりかたはみつからなかったけれど。


 だから、ほんごうさんが、こうさとびをやらせてくれたことは、すごいことだと思った。

 ほんごうさんが、「かき」をもらえるおてつだいをおしえてくれたのは、すごいことだった。


 学校では、まっすぐに家にかえらないボクをわるくいう子もいる。

 お家にお母さんがまっていない子どもたちは、大人の人がいるばしょで、みんなであつまって、おむかえをまっている。


 ボクは、その中にもはいれなかった。


 お家にかえる子たちと、おむかえをまつ子たちで、なかがわるいこともしっている。

 ボクはどちらでもなかった。ボク一人だったから。ボクみたいな子は、ほかにもいるみたいだったけど、なかよくしたりしなかった。


 ほんごうさんのおばあちゃんは、畑をしたり、花をそだてたりしていた。

 まいにち、いそがしそうだったから、ボクは、なかなかおてつだいを、おねがいできなかった。


 それでも、おばあちゃんはボクがおねがいをすると、草むしりをさせてくれた。

 それがおわると、カゴから、「かき」をくれた。2つくれたこともある。


 ほんごうさんは、たまに、おともだちとあそぶのをやめて、お家にかえってきて、いっしょに草むしりをした。

 それから、いっしょに「かき」を食べて、それから、なわとびのれんしゅうをした。


「にじゅうとびっ!」

 ほんごうさんのにじゅうとびは、かいすうがふえていた。おともだちともれんしゅうしているらしい。

 ボクは、にじゅうとびのやりかたも、おしえてもらいたかったけれど、こうさとびのかいすうをふやすことの方がだいじだった。


 ねんのため、こうみんかんのインターネットでもしらべてみたけれど、やっぱり書いてなかった。


 本をさがせばあるかもしれないけれど、どの本をよめばいいかわからなかった。


「「かき」もういっこ!」

「こら、舞!そんなに食べると体が冷える!」


 ほんごうさんがおこられているのをみて、ボクも「かき」が食べたかったけれどがまんをした。

 12月が近くなってきたから、さむくなってきたと思っていた。

 「かき」をたくさん食べると、体がひえてしまうなら、おてつだいも、へらしたほうがいいかもしれない。


 風がつよい日もあっても、木の「かき」はおちてこなかった。


 おてつだいをしたら、「かき」がもらえるけれど、あの木の「かき」はなかなかへらなかった。



 雨の日、ボクがこうみんかんにいると、学校のみんながあそびにくることがあった。


 「かき」のひみつは、しられないようにしないといけない。

 だからボクは、としょしつにかくれる。


 みんなは、あんまりとしょしつにはこない。ボードゲームであそんでいたり、お家からゲーム機をもってきたりする。


 その雨の日は、ほんごうさんもこうみんかんにきていた。

 ボクはかくれていたけれど、ほんごうさんはボクにきづいていないみたいだった。


「にじゅうとびできるようになったよ!」

 ほんごうさんが、女の子のともだちにはなしかけていたけれど、ボードゲームやゲームきにむちゅうみたいだった。


「つまんないよ。」

 ほんごうさんはさびしそうに声をだした。

 だれもきいてなかったみたいだった。


「つまんないよ!」

 ほんごうさんは大きな声をだしたけれど、それでも、みんなは、あんまりはなしをきかなかった。


 ほんごうさんは、ボクとおなじで、ゲームきをもってなかったんだ。


 だから、ボクは、としょしつからこっそりかおをだすと、ほんごうさんにてまねきをした。


 ボクにきづいたほんごうさん、みんなにだまって、としょしつにはいってきた。


「「かき」をもらえるおてつだいをおしえてくれた、おれいだよ。」

 そうして、ボクのとっておきの本をかしてあげた。だれにも借りられないように、かくしてあった、くだものの本だ。


「みて!」

 おばあちゃんがおしえてくれた、「かき」のページにかいてある、文をゆびさした。


「おばあちゃんが言ってたこと、ほんとうだったんだ!」

 「かき」は体がひえるって書いてあったから、ほんごうさんもおどろいていた。


 それから、すこしだけいっしょに本をよんでいたら、雨はあがっていて、みんなは先にかえっていたみたいだった。


 もうすぐくらくなるので、ボクは、その日、ほんごうさんといっしょに、こうみんかんからかえった。

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