ハレを望む

明深 昊

プロローグ

――――

 ――暴力的な魔力。痛い。あつい。


 なぜだろう。今までこんなことはなかったはずなのに。


 風となって荒れ狂う魔力を必死に抑えようとしても、ただひたすらに外へ出ていくそれをアクトにはどうしようもできなかった。体の許容範囲を超えた魔法の行使で視界がちかちかと明滅する。


 セトの声。助けに来てくれたのだろうか。


 それに応えることはできなくて、彼を切り刻んでしまう。


 結局がんばっていたのに、崩れるのは一瞬で。どれだけ積み重ねても、今までの大丈夫が信用できないのなら。


 ああ、あのときにやっぱり、死んでおくべきだったんだろう。


 今度は近くで声がする。だめだと伝えたくても今のアクトには声を発する余裕すらない。


 魔力の波が変わる。すでに無いような意識でよくないと悟る。また、誰かを――。

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