第2話 混乱エロ猫ポーズ

 大イノシシ2匹。よくわからんコウモリ1匹。

 ぐわっと襲いかかってきた大イノシシは、戦士ランカに前足を切り払われて地に伏した。もう1匹も、魔法使いのガリオン──こいつは男だ──にフラッシュボールを頭にぶち当てられ、ひるんだ。そこに俺が思い切り兜割り。まだぴくぴく動いてるが、明らかに戦闘不能だ。

「ナイス!」

 ランカから絶賛の声が飛ぶ。俺、こう見えても本職はマジメなんで、戦闘は上手い。

 だが、俺たちパーティー4人。油断していた。

 ──困惑唱コンフュージョン


 マジか。

 あのよくわからんコウモリ、雑魚だと思って放置していたら魔法を使えた。ポワンとしたシャボン玉みたいなものが俺たちを襲う。

 やっべー。

 大イノシシにとどめをさしていたランカと、魔法詠唱直後で隙があったガリオンにヒットした。俺は紙一重でシャボン玉をかわして、コウモリを一刀両断。イノシシの攻撃前に混乱を食らっていたらヤバかったが。こいつコウモリ自体は大して強くない。


「わはははは。アタシのごんぶとをくらえ」

 すっげえ。

 混乱したランカ、イノシシの××にごんぶと55号をぶっ刺してズコズコしている。ていうかこいつ、戦闘中にバイブ持ち歩いてんのか。やべえ。


 同じくやべえのはガリオンだ。ランカのビキニアーマーのケツに頬ずり。

「むっはあ。汗の匂いぃぃぃ! 筋肉女子!」

 なんだこいつ、普段はカタブツで俺の女僧侶エロトークも全然乗ってこないやつなのに。


「ふふぉー。ボク、毎日めたくそ抜きまくってますランカ様の腹筋とケツで!」

 そっか。

 こいつ、本人がモヤシっ子だから鍛えてる女が好きなんだ。僧侶のマリーに興味がないのは、禁欲的なわけじゃなく性癖の違い。

 俺が毎日、ひそかにマリーで抜いてるのと同様、ガリオンは戦士のランカで──。

 つくづくイヤな勇者パーティーだな、俺たち。


「ひええん。ごめんなさああい」

 背後から、か弱い女が許しを乞う声が聞こえた。

 まずい、旅の商隊の娘あたりが、戦いに巻き込まれたか。

 俺はこれでも勇者だ。慌てて声の方へと振り向いた。

 そこには──。


「おしおきですか。おしり、ぺんぺんですか……?」

 マリーがヨガの猫のポーズみたいな格好でお尻を突き出しながらベソをかいていた。貫頭衣のスリットをまくりあげて、スパッツの下半身。うわあ、これは裸よりエロいですよ。

 どうやら混乱シャボン玉、後衛の彼女にもヒットしていたらしい。


「これまで、マリーはどこでおしおきされていたんだね?」

 全身をガン見しつつ勇者口調で尋ねてみた。

「修道院ですう。わるいことすると、総監先生にぺんぺん……」

  混乱の継続時間は10分程度。時間ギリギリまで見続けたい。

「勇者のことはどう思ってるんだ」

「キモ猿ですう。でも、そんなこと考えたから、罰としてぺんぺん……」

 普段のツンケンして荒っぽい口調とは180度違う姿。やばい、この破壊力。


 うわっぷ!

 新たにエンカウントした魔界ザル3匹が襲いかかってきた。仲間3人はまだ混乱中なのに。っていうか。

 Uzeeeeee!

 俺は鬼神のごとき身のこなしで剣を振るい、サル3匹を一瞬で血の海に沈めた。僧侶の猫のポーズをガン見し続けながらだ。

 サルども、俺たちパーティーよりも3レベルくらい高かった気がするけど、こっちにはもっと大事なことがあるんだ。

 勝利。レベルアップ。

 そして状態異常解除。


*    *


「あのさあガリオン、混乱ってどういう状況なんだ?」

 夜。宿屋で2人きりになった際にガリオンに聞いた。


「混乱はその人物の抑圧された本質を出す状態異常なのです。あの、ボクは……」

 混乱中の記憶は残らないらしい。

「ああ、お前は混乱中、すげえ真面目に魔導書を読みながら僧侶と議論してたぜ」

「ふん。まあ当然です。魔法道に身を捧げるのがボクの本質」

 だが俺は知っている。彼は混乱中に口走っていた。


 冒険の旅に出て2ヶ月。ガリオンが抜いた回数。


  戦士 正正正正正正正正正正正正一

  僧侶 T

  戦士の元同僚 正正正正

  ほか、酒場の女武闘家8回、敵の妖精剣士8回、故郷の王妃様5回。


 俺以上のマシーンじゃねえか!

 もっとも俺もこの夜、僧侶のエロ猫ポーズで12回抜いた。

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