勇者パーティーですが性的にマジ限界です

いのこ

第1話 ごんぶと55号

 俺、童貞。17歳。

 名前はカイロス。職業は勇者。

 いや、俺も勇者様って柄じゃないと思うよ。でも、この世界の勇者は先天的な体質みたいなので決まる。しかも親父も勇者で、魔王軍の中ボスと戦って死亡。王様と故郷の民は俺にめっちゃ期待してる。職業選択の自由とかはない。


 で、俺はいまピンチだ。

 新しい大陸に行って敵が強くなったから? まあ、状態異常とかデバフとか使うやつ増えたし、旅立ち以来のレザーアーマーじゃ正直しんどい。でも、いまのピンチはそれじゃない。


「あのさ、勇者様。カバンのなかに、わたしの」

 一応は「様」付けだが、トゲをはらんだ言葉。冷静を装いつつも目尻がピクピクしているので、本気で怒ってる。

 女僧侶。マリー。18歳。

 さらっさらの黒髪と白い肌。貫頭衣越しにでもわかる、それなりに出るところ出た体型。タイツに包まれた足。もうたまらない。この世界の女僧侶のデザイン考えてくれた神様マジありがとう。

 だが、それが目下のピンチの原因だ。

 馬車のなか。俺が荷物鞄を開けたところで、彼女が入ってきた。視線に気づいてすぐ鞄を閉めたが、中身をばっちり見られたのだろう。


「なぜ、私がなくした枕カバーとクッションカバーを勇者様が持ってんの?」

 いや、それはもちろん男としての自家発で……。言えるか。


「なんのことだい? 僧侶」

 俺は鞄のなかに突っ込んだままの左手で、彼女の私物を握りしめ、ひそかに転移魔法をかけた。モノだけを転移させる場合、行き先は不明。つまりお宝を失うが、証拠品を押さえられるとまずい。非情の選択だ。


 ああ、馬車内でこっそり拝借したお宝だったのに。彼女の髪やお尻が当たっていた布をくんかくんか。いい匂いでたまらなかったんだが。

「なんのことだい、マリー? 僕はそんなものは持っていないよ」

 俺は世界を救う勇者様だ。表向けのさわやかな笑顔は作れる。俺は荷物鞄を開き、両手をヒラヒラさせた。


「……キッモ」

 マリーは汚物を見る目で俺を見てそうつぶやき、馬車から降りていった。

 インテリ女僧侶。たぶん俺より、王国学校偏差値が15は高い。

 彼女は冒険を続けるなかで俺の頭の中身を理解したらしく、ときどき視線が刺すように冷たい。いちおう、この世界の僧侶のルールで勇者は「様」付けしなきゃいけないが。普段の口調は雑だ。

 でも、むしろ罵倒はご褒美。


 他の仲間は外で野営の準備中だ。火を起こすとか水汲みとか。

 俺の分担は馬車の掃除とベッドメイク。さっきはマリーに邪魔されたが、掃除に戻ろう……。


 うわっぷ。

 しまった。戦士の鞄にけつまずいた。

 ゴトッ。

 ひっくり返った鞄から、黒い棒状のものがまろびでた。

 うわー、マジか。あいつ、こんな伝説のアイテムを。


 女戦士。ランカ。元は某国の騎士団にいたムッキムキの21歳。顔はどっちかといえば美人だけど、性格は豪快でムッキムキ。


 ランカの鞄から出たのは──。

 禁呪法で作られた魔道具バイブ。ごんぶと55号である。

 

*   *


 冒険の旅に出て2ヶ月。俺が抜いた回数。


  僧侶 正正正正正正正正

  戦士 正正T

  敵のサキュバス 正正一

  ほか、教会のシスター9回、道具屋の若い子7回、故郷の王妃様4回。


 勇者様のパーティー。

 世界を救う4人の戦士たち。

 でも、みんな10代後半から20代前半の男女。身体マジで健康。


 わかりますよね、はい。

 常にめっちゃムラムラしてます。

 これはそんな俺たちが魔王を倒して世界を救う……までに、いろいろある物語だ。

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