デストロイトホワイト

@daikun-aznable

デストロイトホワイト

青。青、それは海の色。空の色。月の光。僕の好きな色。

自分の中の僕の色であってほしい。それは、魂の色といえるから。

静かに見える。落ち着いて見える。

でも、揺らいでいるんだ。それも激しく。

内側から不安だとか恐怖とかそんなのがひたすらにあふれて止まらないんだ。

とてもじゃないけど、落ち着いてはいれない、沈黙を選べない。今は―


レイリー拡散。

空が青く見えるのは青の波長が短いから。青のエネルギーが強いから。

だから空いっぱいに拡散する。青は他の色を塗りつぶす。

僕の魂の色は青。だから、自分は塗りつぶされる。青一色に。


好きな色は何ですか

やっぱり自分は、緑です。自然と調和の色。そうゆうイメージ。自分もあなたも。


でも、これは自分じゃない。今は僕だから。これからは自分になるかな。僕のままなのかな。それとも私?


自分って何?自分は僕?違う。自分も僕。きっと、私も僕。自分が分からない。

あの時の自分。今の自分。これからの自分。

あの時の僕。今の僕。これからの僕。

あの時の私。今の私。これからの私。


あなたは何色ですか?

私?私は―

そう、あなたもあなたじゃない。今、自分に僕に見えているのはあなたじゃない。

あなたを見せてよ。ありのままのあなたを見せてよ。


でも、僕はありのままを見せられない。あなたを傷つけるから。あなたに傷つけられるから。

だから自分の好きな色は緑で僕の好きな色は青。


目の前にいるあなたには興味がわかない。あなたはあなたじゃないもの。

信用も信頼もできない。あなたはあなたじゃないもの。

愛することもできない。あなたはあなたじゃないもの。

だから僕の前から消えてよ。僕に関わらないでよ。僕に求めないでよ。


でも、寂しい。苦しい。

誰かに見られていないと、求められていないと、自分が自分じゃなくなる。僕が僕を保てない。

結局、自分一人では何もできない。

僕は自分を、自分はあなたを求めてしまう。

そんなの嫌だ。

僕は何も信じたくない。何も期待したくない。自分にも、あなたにも。

僕はあなたが嫌いだ。

僕は自分が嫌いだ。

僕は僕が嫌いだ。

あなたはあなたが好きなの?どうして。あなたが信じられるから?


何を信じて生きているの?


あなたは神を信じてる。神はあなたを裏切らないから。本当に裏切らないの。裏切られたことあるでしょ。

神がいないと、他人を信じられないんでしょ。自分を信じられないんでしょ。

あなたは神を見ているの?あなたは神に見られているの?神はあなたを見ているの?

ほら、揺らいだ。あなたは神を疑った。


あなたには夢があるの?好きなことがあるんでしょ。退屈を紛らわせる好きなこと。

自分の情熱を注げるもの。あなたを一人から守るもの。

ちゃんと見てよ。あなたの周りを。

あなたはその情熱を信じているかもしれない。でも怖くない?恐ろしくない?不安にならない?

その情熱が消えるとき、あなたは何歳?あなたはあなたでいられる?あなたはあなたを受け入れられる?

空っぽのあなたを。

ほら、あなたはあなたを疑った。


僕は僕の抱いた夢を信じていた。

あなたの夢は何?

僕は夢をかなえることができた。それで、たどり着いた。憧れの白衣に。

今までの僕が肯定された。よかったじゃない。今までの僕を受け入れられる。よかったじゃない。今までの僕を今まで関わってきたすべてを愛せる。よかったじゃない。

一本の線が引かれた。丈夫で強い線。どこまでも、どこまでも続いている。暗闇を進む、白い線。この線は信じることができる。

この線は愛することができるかもしれない。

このレールを進むだけ。あれ?終点はどこだっけ?


終点は死。そうか死ぬまでこの線を進んでいくのか。何人の尊い命を救うのだろう。何人に感謝されるんだろう。何人に信頼されるんだろう。何人に愛されるのだろう。、、、、、


何人に恨まれるのだろう。何人に嫌われるのだろう。何人の命を、、、、、


後、4年後。僕はもう引き返せない。そう、これまでの期待、愛、時間、お金。そして、あの時の僕が見つめている。今の僕を。

白衣。これは憧れの終点。そうか、ただの駅だったんだ。でもこの駅で降りることはできない。

線が引かれた?違う。線はすでに引かれていた。その線を進んできただけ。これまでの線はグラグラしていた。不安だった、苦しかった、寂しかった。

あれ?本当にこれからの線は大丈夫?


ぐらついていく。丈夫な線だったのに。強い線だったのに。違う、丈夫に、強く見えていただけ。

もう、この線は信じられない。


新しい線を見つけないと。また揺らいだ。


労働は、、、したくない。社会に出たくない。僕の時間を奪わないでよ。僕の時間の価値をあなたが決めないで。

でも、みんな労働してる。誰かに時間を奪われている。

みんなごまかしている。誰かのため、国のため、自分のため、お金のため。

本当は自分の時間を過ごしたいのに。

あなたの代わりはいくらでもいるのよ。あなたは単なる歯車にすぎない。

そう、歯車。交換可能な歯車。

気持ちいいんでしょ。誰かとかみ合うことができて。

苦しんでしょ。誰かとかみ合って。

もう、あなたには時間がないのよ。いずれ肉体の限界は来る。あなたはそこに何を残したの?あなたは何人の人に覚えられたの?あなたはこの世界に何を残したの?

そう、お金ね。

お金を信じているの?

これはただの紙切れ。でもこの紙切れに生かされている。食べ物をもらっている。こころをもらっている。命をもらっている。

この紙切れがないと生活できない。

あなたが積み上げた紙切れの山は、不安の大きさ。恐怖の大きさ。

未来を考えると辛いんでしょ。

だからあなたは守ったの。紙切れで。


いたくもないあの人とお酒を飲んだ。また、お金が減った。

もちろんあなたはおどけた。ピエロみたいに。本当はお酒まずいんでしょ。

本当は楽しくないでしょ。

上手に笑えてる?上手に笑えてるでしょ?うれしいでしょ。あなたに興味を示して。気持ちいでしょ?僕を見下して。

あなたに興味がない。あなたのこの先なんてどうでもいい。

あなたの情報を僕に押し付けないで。

あなたの価値観を僕に押し付けないで。


じゃあ、行かなければ?そう、行かなければいいじゃん。

同調圧力。

断れないんでしょ。なんで。

嫌われるのが怖いから。また会ったときに気まずいから。

会いたくない。会いたくない。会いたくない。


僕からお金を奪わないで。

僕から時間を奪わないでよ。

僕を巻き込まないでよ。


でも、誰も自分を見ないのは、分かってくれないのは寂しい。苦しい。

だから、僕はお金を捨てる。関わりたくないのに。


自分だけじゃない。お金は大切な人を守ってくれる。

そう、大切な人。

僕を分かってくれる人。僕を大切にしてくれる人。僕を愛してくれる人。


その人以外いらない。

結局、僕は僕しか見てない。でも僕は僕が分からない。


家賃。ガス水道、電気。それに食費。生きているだけなのに、お金がかかる。

財布にお金がないと不安。

銀行にお金がないと不安。


そう、たまってないと不安。満ちてないと不安。

僕も自分もあなたも不完全を許せない。

今日も、明日も、明後日も。永遠に続くその日が完全でないと許せない。

その不安に動かされる。

慢性的な不安と目の前の快楽。それだけが今の僕とあなた。


お金があると、少し余裕があると他人に優しくできる。ただそれだけ。優しさなんてそんなもん。


あなたの仮面の笑みが嫌い。

あなたの攻撃的な笑みが嫌い。


僕が知らないあなた。あなたが知らない僕。

気持ち悪い。

嫌い。嫌いで満たされる。嫌い嫌い大嫌い。


揺らぐ。揺らぐ。揺らぐ。揺らぐ。揺らぐ。

壊れる。壊れる。壊れる。壊れる。壊れる。


また青が広がっていく。

何を信じて生きていくの?

何を愛して生きていくの?

何に幸せを感じていけばいいの?


提出期限ぎりぎりのレポートを徹夜で仕上げた。何もわかっていない。また、不完全が増えた。

午前8時に、レポートの提出のため、大学に向かった。ここは、この街はまるで監獄。

毎日思う。

のどが渇く。寒い。もう冬の季節。財布の中には10円玉一枚しか入っていない。

もう限界。いやだ。


ふと、道端に落ちていたガムを見つけた。僕はそのガムを凝視して、財布から取り出した最後の10円玉をそのガムの上に押し付けた。


僕は研究室を目指した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

デストロイトホワイト @daikun-aznable

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ