ドSに小説を校閲する男。やがて、小説は思わぬ方向へと……

 ラストでの伏線の収束していく感じがとても面白かったです。

 主人公は駆け出し作家の天野純一。彼はアンソロジーに寄稿する小説のネタに悩み、どうにか一作の恋愛小説を書き上げることができるが……。

 作中作は「菊池」と「梨乃」の恋愛小説、という体で進む。「月が綺麗」と口にされたことで心がときめく様子などが描かれていた作品として仕上がる。

 だが、第三話で登場する凄腕の校閲係の蛇喰が登場したことで、事態は思わぬ方向へと。

 作中作に散りばめられたわずかな「違和感」のある描写の数々。それらが伏線として蛇喰のツッコミが入り、「思わぬ真相」、「思わぬ結末」へと導かれていく。

 恋愛小説として書かれたものが、「矛盾点」という名の伏線を切り口に不穏な方向へと向かっていく。その過程がとても面白かったです。

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