第6話

 おばあちゃん家でムカデの死骸を見た。秋の乾燥した茶色い草みたいになっていて、私は庭に放った。


 週明けだ。仕事に三日ぶりにいったが、頭がぽうっとしていて、休みボケをしていた。他のところから書類を届けにきた人と上手くコミュニケーションがとれなくて、私じゃなかったら盛り上がったのにな、とか、私だからテンション低いままなんだろうな、とかもやもやする。職場にいる年の近い人が、どんどん結婚していくんだろうな、とよく思う。私だけが取り残されていく感覚を抱く。


 仕事を終えて家に帰りながら、繭子と電話で話した。

「最近、父さんと弟さん、険悪なんだよね」

 昨日、県外で暮らしている父の弟は、通夜に出席していたのだが、通夜が終わったあと、おばあちゃん家に父の弟が寄ると皆、思っていたのに、弟はおばあちゃん家に寄らなかった。それどころか、父に電話して、「なんで母さんは通夜に来てないんだよ」と怒っていたらしい。それを、私も近くで聞いていたが、父はなんだ、その言いぐさは、とぶつくさ言っていた。どちらが悪いのだろうか?私は聞いていて、父に「おばあちゃんが通夜に行けないって弟さんに言うべきだったんじゃないの?」と言ったが、私が言えることじゃない。私が何を言っても、直接関係はないのだから、口を挟んでどうこうできる立場じゃない。それなのに、気になる。できれば関係は良くなってほしい。

「まぁ、おばあちゃん家に寄るぐらいしてもよかったのにね」

「何か、事情があるんだと思うよ。だけど、せっかくおばあちゃん、弟さんと会えるの楽しみにしてただろうに、可哀そうだよね」

 

 小説の評価が、昨日投稿した分はどうだろう、と考える。投稿するときに見るぐらいだけど、上がってたらいいなと期待する一方で、何も反応がなかったらどうしよう、とも思う。

 仕事をしていると、小説で何を書いたらいいのかわからない。今日は英人とは会わなかった。電話をすることの多い一日だった。伝えたいことを伝えること、伝えなきゃいけないことを忘れずに一回で言うことが難しい。つい、忘れてしまうし、自分が何を言っているのかわからなくなる。


 今日は風呂に入りながら、アイドルの曲をかけた。毎日、そうするけれど、一向に飽きることはない。小鳥遊香澄という子のYouTubeを見た。年が私と二つ違う。高校を卒業するときに撮った雑誌のメイキング動画だった。高校生活を振り返っていて、同級生の女の子に誘われて、断った、と彼女は動画で話した。そんな彼女に私は共感のようなものを覚える。

 あっという間に夜になる。小説を書ける時間も、一時間弱しかない。残業している人のことを考えると恵まれているのかもしれないし、稼ぐことの方がよいことなのかもしれない。

 昨日読んだ漫画を思い出した。日常系の漫画だった。主人公が病気になって、できることが限られる日常の中で幸せに気づくといったような話だ。一巻だけ買って、あとはブックオフで買おうか、と考える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

十月から ゆた @abbjd

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ