第4話

 昨日、本屋で買った小説を昨日から読んでいる。映画化された小説らしく、YouTubeの予告がよかったので、原作小説を読んでみようと思い立った。映画も見たいけれど、今のところ、手に入れやすい小説から読むことにする。公開済みの映画って、どうやって見たらいいんだろう?ゲオで借りることぐらいしか思いつかない。

 ソファに座って、小説を読んでみて、あれ、と私は思う。これは読んだことがあるぞ。少し考え、前に学校の図書室で始めの方だけ読んだことを思い出した。たぶん、そのときは物語の展開が気に入らなくて最後まで読んでいない。今本を開くとすんなり読めて特に抵抗感はなかった。前にこの本を読んだ時の私と今の私の精神状態が違うのは、不思議な感じがする。人ってその時々で変わるものなんだ、と。

 夜、妹の繭子がドラマのDVDをかけた。文具店の物語だ。それを私も見た。

「もう、次が最終回だよ。早いね」

 妹は、そのDVDを今日レンタル屋で借りて来た。ネットで予約していたという。私は言う。

「なんか、はじめの方は抵抗があるんだけど、この作品、全然面白くないじゃん、と思っても、しばらく見ているうちにやっぱり好きになることがあるんだよね。一度見るのやめて、少し経ったあとにやっぱり気になって見返したら、途端に自分にとって面白い作品に変わることがある。私、何を勘違いしてたんだろう。このよさに気づかずにスルーせずによかったって思う」

 主人公が手紙を書くシーンだ。繭子はじっと見ていて、私も隣でテレビを見る。

「お姉ちゃんって、なんか人でもそうだけど、最初毛嫌いしがちだもんね。食わず嫌いっていうか。怖がりなのかな?一旦、警戒するの。その分、傷つけられる人もいるんだからね」

 妹の言う通りだ。誰かを大したわけもなく嫌いだという態度で接することが私にはある。

 文具店を見た後、私は小説を読もう、と思ってまた恋愛小説を開く。どこまで読んだのか知らないが、この文はすでに読んだことがあるが、もう一度始めから読む。


 カクヨムの新しい話を投稿しようとサイトを開いたら、お気に入りとPV数が増えていてびっくりした。思わず鼓動が早くなる。私は、マウスを操作して、思わず自分の作品画面をじっと見る。お気に入りまでされているではないか。なにか、これは私が自分でそうしたのではないかという錯覚を覚える。信じられなかった。でも、たぶんこれはまぐれですぐ離れていくんだろう。期待して、自分を持ち上げてきっとそのあとに、やっぱり私の書くものは大したことなかったって、そういう反応を得そうな気がする。

 あまりにびっくりしたものだから、英人にラインしていた。

『昨日投稿した小説の反応が過去一多くて、びっくりした。驚きすぎて、鼓動が早くなった』

 英人は、数分後返信をくれた。

『よかったね』

 グッドの絵文字がついている。彼の笑顔が浮かぶような気がした。ラインではいつも傷つく言葉を一つも言わない少しできすぎた彼だが、その分、文字数は少ない。彼のことを思い出すと、現実に心が戻る。

 

 おばあちゃんとお寺に行った。夜勤明けの母が、おばあちゃん家に来て、先におばあちゃん家にいる私と繭子、それにおばあちゃんと合流したあと、お寺に行く予定にしていた。私は繭子の提案に乗っただけで、母に『仕事終わり、おばあちゃん家に寄って』とラインすることすら妹に任せきりにしていたのだが、母はなかなかおばあちゃん家に来なかった。そこで、繭子が、

「やっぱりお寺で待ち合わせにした方がよかったかなぁ」

 と愚痴っぽく言う。

 私は、「一度決めたんだから、今更文句言わないでよ」と少しきつめに言ってしまった。全てを妹の繭子に押し付けておいて、そう言うのは勝手だったかもしれない。案の定、妹にも「もう、お姉ちゃんにはこういう愚痴聞かせられないね」と少し尖った口調で言われる。私は、悪かったよ、の一言を言えずにむっとする。

 少しして、あぁ、また言わなくていいことを言った、と後悔する。言い方が違ったのではないか、とか、妹に当たるのは間違っている、とか。だけれど、私は私の思ったまま、そんな計画しなきゃよかったなんて言わないでよ、と伝えてしまうのは間違っているだろうか。思ったことを口に出すのは、なんのためか。私は妹にどうしてほしかったのだろうか。

 お寺について、お寺の前に階段があり、車いすのおばあちゃんは別の門からしか通れない、ということになり、運転している母が、階段のない門の前で私たちをおろしてくれた。

「行ってきなさい」

 と母が少し疲れた声で言う。おばあちゃんは父のお母さんだ。繭子と私がいれば、と思っているところもあるのかもしれないし、何より車をどこかに置きに行かないといけないこともあり、母は私たちと一緒にお寺に参拝には行かずにいる、と言った。

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