第4話 考えられない私

そして、私は彼女にお礼を言うと帰る事にしたのです。

「お邪魔しました」

玄関で靴を履いていると後ろから話しかけられました。

振り返ると彼女が笑顔でこちらを見つめており、私もそれに答えるように微笑みます。

そのままドアを開けようとすると、突然呼び止められてしまいました。

振り返ってみると彼女の顔が目の前に迫っていました。

(えっ!?)

と思った瞬間、唇を奪われていたのです。

突然の事に驚きつつも、抵抗できなかったためされるがままの状態になってしまいました。

しばらく経った後ようやく解放されたのですが、その時の顔は真っ赤になっていました。

そんな私を見て彼女は満足そうな表情を浮かべています。

「またね」

と手を振る彼女に見送られて私は自宅へ戻りました。

家に帰った後もあの感触を思い出してしまっていて、なかなか眠れませんでした……。

美月とのデートを終えた次の日、私は普段通りに学校へ向かっていました。

しかし、その表情は少し暗かったです。

それは昨日のデートが原因なのですが、どうしても忘れられないのです。

『キスしたいな』

という彼女の言葉が脳裏から離れません。

私も同じ気持ちだったので、つい頷いてしまったのですが……。

いざとなったら恥ずかしくなってしまい、何もできなかった自分が情けないです。

そんな事を考えつつも教室に入ります。

そうするとクラスメイトたちが一斉に駆け寄ってきました。

(なんだろう……?)

不思議に思いながらも話を聞いてみると……。

どうやら昨日の出来事が広まっているらしいのです。

「ねえねえ莉桜花ちゃん!  2人って付き合ってるの!?」

そんな質問をされて私は戸惑いながらも答えました。

「え?  いや違うよ?」

(ただ一緒に遊びに行っただけだよ?)

そう思いながら答えるとクラスメイトたちはさらに質問攻めにしてきます。

「じゃあなんで手を繋いでたの?」

その質問にどう答えようか迷っていると、一人の生徒が話しかけてきました。

その子は私が悩んでいる様子を察してくれたようで、代わりに答えてくれたのです。

「あれはね、莉桜花さんが迷子にならないようにするためなんだよ」

彼女の説明を聞いたクラスメイトたちは納得したようで、それ以上何も言ってこなくなりました。

やっと解放された私は安堵していたのですが……。

休み時間になると再び質問攻めにあってしまいます。

結局、その日は一日中同じような状況が続きました。

放課後になると私は急いで家に帰ることにしました。

(早く帰ろう……)

そう思いながら歩いていると後ろから声をかけられるのです。

振り向くとそこにいたのは美月でした。

彼女は笑顔で話しかけてきます。

「一緒に帰らない?」

私は少し戸惑いながらも了承し、並んで歩き出しました。

しばらく沈黙が続いた後、美月が口を開きます。

「ねぇ、私達って恋人よね、沢山デートしたいなぁ」

その言葉に私はドキッとしましたが、平静を装って答えました。

「う、うんそうだね……」

そう答えると美月は、嬉しそうな表情を浮かべます。

「そうだ、これから人気のない公園へ行かない?」

美月の提案に私は少し考え込みます。

確かに人気のない公園はデートスポットとして人気ですが、今は学校帰りなので制服のままです。

そんな状態で行くのは抵抗がありましたが、断る理由もありませんし、

何より美月と一緒に居たい気持ちが強かったので了承することにしました。

そして私達は公園へと向かいました……。

公園に着くと辺り一面は夕焼け色に染まっておりとても綺麗でした。

そんな中、美月はベンチに座って私を見つめます。

私も隣に座ると美月が話しかけてきました。

「ねえ莉桜花」

名前を呼ばれただけなのに胸がドキドキしてしまいます。

「どうしたの?」

私が尋ねると彼女は、微笑みながら答えてくれました。

その笑顔はとても可愛らしく見惚れてしまう程です。

そんなことを考えていると美月の顔がどんどん近づいてきます。

(えっ!?)

と思った瞬間、唇を奪われていました。

突然の事に驚いたのですが、抵抗する余裕もなくされるがままになっていました。

しばらくして唇が離れるとお互いに見つめ合います。

「莉桜花……好きすぎておかしくなりそう……」

彼女はそう言うと再び唇を重ねてきたのです。

今度は、舌を絡ませる大人のキスでした。

お互いの唾液を交換し合っているかのような激しいディープキスです。

顔はどんどん赤くなっていきますが、それでもまだやめません。

やがて口を離すとお互いの顔を見合います。

「これからどうするの?」

美月が尋ねてきた。

「とりあえず、お互いの家が近いから一回帰ろうか」

私が答えると彼女は小さく頷いてくれたので、私たちは一緒に帰ることにしたのでした。

そうしてお互い別々にお風呂に入り、就寝前の一時を過ごした後、私は自分の部屋に向かいました。

(今日も疲れたなぁ……)

そう思いながらベッドに横になると、ふとあの時の事を思い出してしまい顔が熱くなってきます。

あの時美月は『これからどうするの?』と言っていましたが、もちろん帰る気なんてありません。

むしろこのまま朝まで一緒に居たいと思っていました。

でも、そんな事恥ずかしくて口に出せる訳がありません。

そんな事を考えているうちにいつの間にか眠りに落ちていたようです。

翌朝、目を覚ますと同時に隣を見ると美月の姿がありました。

どうやら先に起きていてずっと私の寝顔を見ていたみたいです。

「おはよう莉桜花」

そう言って微笑む彼女の笑顔は、とても綺麗で見惚れてしまいます。

そんな事を考えつつ挨拶を返すと彼女は私に抱きついてきました。

(あれ?  なんでだろう……なんかドキドキする……)

そんな事を考えつつも、私は彼女の背中に腕を回します。

すると、さらに強く抱きしめられてしまいました。

(苦しいよ……でもこれはこれで幸せかも……)

そんなことを考えていたのですが、美月の力が緩む気配は全くありません。

むしろどんどん強くなっているような気がします。

(ちょっと痛いんだけどなぁ……でもまぁいっかぁ)

そう思いながらも暫くの間されるがままになっていると、ようやく解放してくれました。

「もうっ! いきなり何するんですか!?」

私が文句を言うと彼女は笑いながら謝ってきます。

「ごめんね莉桜花」

そんなやり取りをしている間もずっと手は繋いだままでした。

「それよりもここって私の家だよね、どうして美月が居るの?」

そう尋ねると、彼女は笑顔で答えてくれました。

「だって莉桜花と離れたくないから」

そんなストレートな言葉に思わずドキッとしてしまいます。

(うぅ……美月はずるいなぁ)

そんな事を思いながら私は、照れ隠しの為に話題を変えることにしました。

「そ、それよりさ!  朝ご飯作ってくるね」

そう言って立ち上がろうとすると腕を掴まれてしまいました。

驚いて振り向くと、そこには笑顔の美月が居ます。

そして、そのまま引き寄せられると再び抱きつかれました。

今度は、先程とは違い優しく包み込むような感じです。

その心地良さに身を委ねていると不意に耳元で囁かれたのです。

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