第2話 最初の日

――そして目が覚めたとき、私はこの世界で二度目の人生を歩んでいた。


意識が浮上し、次に感じたのは、ひどく湿った冷気だった。

目を開くと、そこは墓地だった。

周囲を濃い霧が包み込んでいて、古い石碑や墓標らしきものがぼんやりと見える。


死ぬと、こんな場所に来るのかと、妙に冷静に関心した。


とりあえず自分の身体を触って確認すると、制服のスカートのポッケには、財布だけが収まっていた。中にはわずかなお金と、マイナンバーカードや学生証がそのまま残っている。どこも欠損はなく、痛みもない。ただ、全身にまとわりつくような、奇妙な倦怠感だけがあった。


私は立ち上がり、辺りを見回す。

ここはどこなのか、これからどうしたものか、ぼんやりと考え始めたときだった。


先ほどより、霧が薄くなっていくのが分かった。


目を凝らすと、遠くから何かの人影が近づいてくる。

ゆっくりと、しかし確かな足取りでこちらへ歩を進めてきた男性は、私を見て冷たい声で問うた。


「お前、ここで何をしている?」


その問いかけと共に、霧はすっかり晴れ、私はその男性の冷徹な顔をはっきりと捉えた。

これが、私がこの世界で最初に会った人物であり、後に私の運命を支配するゼノ・ラディウス公爵との出会いだった。

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