しあわせさがし
LeafofLuck
教室の光影
昼休みのチャイムが鳴ると、私の席のまわりにはいつものようにみんなが集まってきた。
「ひな〜、昨日のドラマ見た?マジで泣けたんだけど!」
「見た見た!あの演技、すごかったよね〜!」
私は笑って頷きながら、なんとなく机の端を指でなぞる。
笑っているはずなのに、どこかで自分の笑顔が嘘みたいに感じる瞬間がある。
みんな優しいし、楽しいのに。
なのに、心のどこかがぽっかり空いてる。
ふと前を見ると、私の前の席の紗良ちゃんが静かにノートを閉じていた。
転校してきたばかりの、あの“紗良”。
ドラマや映画で何度も見た、有名な俳優。
最初に教室で見たとき、ほんとに本物?って思った。
でも、近くで見れば見るほど、テレビで見るよりずっと普通で、少しだけ寂しそうだった。
気づけば、私は声をかけていた。
「ねぇ、紗良ちゃん。お昼、一緒に食べよ?」
驚いた顔のあと、紗良ちゃんは小さく笑った。
その笑顔はカメラの前のものよりずっと儚くて、柔らかかった。
それが、なんだか嬉しかった。
放課後。
友達とバス停で別れて、私はひとり電車に乗る。
窓の外を流れる夕暮れの街を眺めながら、ぼんやり考える。
――学校って、なんのために行くんだろう。
――友達って、なんだろう。
みんな優しいし、嫌いな人なんていない。
でも、どうしてときどき、全てめんどくさく感じるんだろう。
そんな自分が、たまらなく嫌になる。
電車の揺れに身を任せているうちに、気づけば最寄り駅。
空はすっかりオレンジ色に染まり、暗くなる。
家へ向かう道の途中、ふと、歩道の端に何かが落ちているのが見えた。
「……なにこれ」
普段はおっこちてるものは絶対に拾わないのに、、、、
しゃがんで拾い上げると、小さな木の箱だった。
手のひらにすっぽり収まるくらい。
角が少し擦れて、古びた感じがする。
ただの箱――そう分かってるのに、どうしてか目が離せなかった。
胸の奥がざわっとして、喉の奥が少し熱くなる。
懐かしいような、悲しいような気持ち。
見つめれば見つめるほど、この箱と“何かを約束した”気がしてならなかった。
私はそのまま、夕焼けの道でしばらく立ち尽くしていた。
(……変なの。ただの箱なのに。)
この日拾った小さな箱が、
これからの私の「幸せ」を少しずつ変えていくなんて――
その時は、まだ知らなかった。
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