第37話 (第二章続き)
オレの
そして、もう一つは何を隠そう連れション問題。といっても、おしっこを一緒にするわけではない。もっと現場的な問題。確かにオレも他人のことをとやかく言えるほど砂を掻くのは上手いわけじゃない。いつも砂が散らばって掃除の迷惑をかけてはいるが、それに関してはさして誰も問題視していないし、オレが何か迷惑を被っている訳でもない。うん、こっちじゃない。
迷惑な行為とは、あっち。ボクちゃんが自分のションベンにオレを付き合わせようとすることだ。これはマジで慣れたくないぞ。滅茶苦茶嫌だぞ! マジ大迷惑だぞ! きっとどんな実害を被るのかを知れば、誰でもそう感じると思うぞ。念のためもう一度力説しておく。間違いなく不快になるぞ! 絶対だ!
頼むから、んこでもシッコでもオレをトイレに連れ込むのは止めてくれ~。んこはまだいい。あの臭いも確かに辟易するが、扉の下の隙間に鼻を押し付けていれば、廊下の新鮮な空気が入って来るので何とか我慢できるし、大抵臭気は上昇気流に乗るから下にはそれほど下りて来ないし。
だがしかし、立ちションは、いけない。降って来るんだよ、細かい霧状のナニが……ううっ。半径1mは広がってるぞ、多分。
しかーも、大変不愉快なことに、大変あり得ないことに、猫の習性としては体に異物が着くと舐めとっちゃうんだよ、これが。んぎゃー、おええええっ。きもす極地
トイレらしき気配を感じ取ると、オレはひたすら逃げまくった。隠れまくった。だけど、間に合いそうもない時を除いて、ボクちゃんは中々の策士だ。寝込みを襲いやがるのさ。はっとした時には、トイレの中。しかも、鍵を閉める周到さ。お猫様の爪をもってしても、開かないやつだ。
〈猫のプロ〉とはいえ、さすがにあの高さにある回す鍵は開けられない。がっくり。
うっ、何が悲しゅうて用もないトイレに入らんといかんのじゃ。オレは必要ないじゃねえか。ともかく、霧状のナニが口に入るのは避けたいので引手(ひきて)に手を掛けて唸りまくるが、ボクちゃんはあくまでもマイペース。気付けよ、ばかっ。
「なーおなーおんなーおおっ(出せ出せ出しやがれー)」
「もうちょっと待っててねー」
「みゃおおっ(待ちたくない)!」
オレの気持ちは通じない。ああ、お外に出たいのに籠の鳥になりぬ。くすん
トイレの床に腰を下ろすのも何だか抵抗があるので、二足(にそく)立ちでじっと耐えることになる。猫が嫌がっていることに無頓着で、そのくせ自分のコワイを優先するのはお子ちゃまならではだから、もう一年ほどの我慢に違いないと、自分を慰めている。さすがに、中学生になったら止めるだろう……止めるはず?
だが、こんな不毛な遣り取り(主に迷惑を被っているのはオレ)をいい加減勘弁されたいオレは、ある時名案を思いついた。オレって天才かも~。ボクちゃんを座りシッコに変更させればいいのだ。立ちションは男の沽券(こけん)とか思っている連中は自分でトイレ掃除したことがないに違いない。ふんす
ついこの前、帰宅してトイレに飛び込んだ背の高い次兄が、座りシッコらしきことを知ったのだ。んこも同時だったかもしれんが、パンツ下ろしながら飛び込んでたもんね。家族に一人はそういう習慣の人がいるのだから、感化させられないものだろうか。お願いできるわけもないので次兄のシッコを見せることは出来ないが、何とかボクちゃんに伝えたいものである。うむ
続く
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