第24話 第一章(続き)
元々長男の個室だったらしい物置部屋を前に、扉の開け方を習得する前でもあり、入ることを断念すると気を取り直して隣の部屋に入ることにした。次男の部屋か三男の部屋か、今のところ分からないが、臭いから思う所はある。まあ、入ってみてのお楽しみだにゃ。くふん
けれど、この家の室内扉は全て引き戸になっていて、空いているとそれ自体の表装が分からない。要は、プレートが掛かっていても見えないので、今の状態では誰の部屋か分からないってことだ。そもそもプレートがかかっている位置が高くて、真下から読めるかどうかも定かじゃないけどな。
で、室内から見上げると、ここの扉は見事にシールだらけだった。あーなるほどチビのやりそうなことだな。子どもは貼るよな。シール貼り大好きだよな。いつ引っ越してきたのかは知らないけれど、割にシールが綺麗だからそう遠くない昔だろう。なら、兄達の部屋の扉が過去の遺産を抱えていることはあるまい。うむ
どれどれ何のシールかな? ポケモン、ドラえもん、コナンとワンピース、王道だね。それと、〈鬼滅の〇〉? なんじゃそりゃ。何かのヒーローものか? 漫画の主人公だよな? ここ数年漫画を読んどらんから、そもそも子供向けなのかも分からん。ふむ、三男坊もといボクちゃんのお部屋で間違いなさそうだけど。
まあいいや。ちょっくらお邪魔するよ~。とりあえず、ぐるっと見るだけだからね~。部屋は南向きで大きな窓からレースのカーテン越しに日が降り注いでいる。扉脇の壁を足側にベッドが設置され、頭の方に洋服箪笥が見えている。そして、窓を左に見るように机が置いてある。ゆとりのある室内模様に羨ましくて溜息がもれた。はぁ
木製の学習机に、お揃いらしき設えの箪笥、本棚と一式揃っている。おそらく小学校入学祝いで揃えられた家具だと思われる。三番目なのにお下がりじゃなさそうだ。いいね~、愛されているなあ。オレなんか長男なのに従兄のお下がりだったもの。まあ、自分の机があって、それを置く場所を確保出来ただけ何もないよりましだったけどな~。お下がりと分かって泣いて悔しがったのも懐かしい思い出だな。
そして机の右隣にある本棚の中は漫画だらけだ。学習関連の書籍は机の棚にしかない。言わずと知れた勉強嫌いだな、こりゃ。しかも、マンガがなあ。ドラ〇ンボール、〇ンピース、鬼滅〇刃、呪術なんとやら……うん多分全部間違いなく流行(はやり)モノだな。悪くはないけど、もう少し難しいものも読めばいいのに。
オレが親なら、学習漫画シリーズやブ〇ックジャックとか手塚治虫先生のシリーズ、横山たかし先生の三国志なんかを買ってやるけどな。ま、親じゃないし。それが本人のためになるとも限らないし、そもそも興味を抱かなければ、漫画といえど読むのが苦痛になってしまうものな。
まあ、どうでもいいか。オレに育児責任があるわけじゃないのだ。なら、細かいことは気にしないことにしようー。おーっ! とりあえず、今日は、オレの今後が快適であるように家の中を把握することを優先するにゃ。
最上階にいるからだろうか、屋根に往来する鳥の気配を感じる。カラスとかすずめとか。さすが猫だ。自分の身体だけどあれこれ新鮮だ。これほど気配に敏感なようなら、近くに来た幽霊なども見えるかもしれない。前任の幽霊は単に居ついていただけで、案外簡単に交代できるかもしれない。希望的観測ともいうか……ドキドキ
うおっ、窓に影が! しまった野生の血が騒いだのか、動くモノを本能的に追跡してしまうようだ。かあかあですと? んががががっ、ただのカラスではないか。ああ、期待して損したぜ。今は三階だし、そうそう楽しいものが外を通るはずもないか……がっかり
続く
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