第2話 友愛との出会い

朝の光が森の小道を淡く照らしていた。リナは小さなリュックを背負い、ゆっくりと歩いていた。周囲には鳥のさえずりと風に揺れる木々の音だけが響く。人の気配はなく、孤独は変わらず彼女のそばにあった。


「……誰か、いないかな」


小さくつぶやいたその声は、森の奥深くに吸い込まれていく。リナは心の奥で、まだはっきりとはわからない何かを探していた。


すると、突然前方から声がした。

「おい!そこの人、待って!」


リナは驚いて立ち止まると、草むらから少年が顔を出した。少し泥だらけで、背中に大きな木の枝を背負っている。


「だ、大丈夫?」リナが問いかける。

「大丈夫だよ。ただ、ちょっと木の枝が重すぎて…手伝ってくれない?」


リナは一瞬ためらった。助けることで心が温かくなることがあるのか、それともただ行動するだけなのか、彼女にはわからなかった。だが、無意識に手が伸び、二人で枝を運ぶことになった。


枝を運び終えると、少年は息を切らしながら笑った。

「ありがとう!君、名前は?」

「リナ。」

「僕はカイル。よろしく!」


それから二人は森を歩きながら話した。カイルは明るく、無邪気で、時折リナを笑わせるような冗談を言った。リナはその声や笑顔を受け止めるたびに、胸の奥が小さく震えるのを感じた。温かさとも違う、なんと言えばいいのかわからない感覚。


「リナ、君っていつも一人なの?」

「……ええ、まあ。」

「そうなんだ。でも、今日こうして一緒に歩けてよかったよ。」


その言葉にリナの胸に小さな何かが生まれた。友愛――それはまだ完全に理解できる感情ではなかったが、確かに彼女の心に届いた。


日が傾き始め、二人は森の小さな川辺に腰を下ろした。カイルは水面に石を投げて遊び、リナはその様子をじっと見つめる。水面に映る二人の姿は、ほんの少しだけ彼女の心を和ませた。


「リナ、君はなんで旅に出たの?」

「……愛を知りたいの。」

「愛?」


カイルは首をかしげたが、真剣にリナの目を見つめた。

「じゃあ、僕が教えてあげるよ。友愛っていうのはね、こういうことなんだ」


その瞬間、リナは理解しようとした。笑い合い、助け合い、分かち合う――それが友愛なのだと。心の奥で芽生えた小さな震えは、確かに“愛”の一片だった。


「……ありがとう、カイル」


リナは初めて、誰かに心から言葉をかけることができた。

それは小さな一歩だったが、彼女にとっては大きな前進だった。孤独だった世界に、少しずつ色が差し込むような瞬間。


夕日が二人の影を長く伸ばす中、リナは心の奥でそっとつぶやいた。


――これが、愛の一つなのかもしれない。


そして、少女の旅はまだ始まったばかりだった。

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