いろんな分野のショートストーリー書いてみた

@kuroe113

○○○○○からのSNS

 田舎から上京してはや10年。

 高校を中退してミュージシャンになるといったら、両親と大喧嘩。

 今ではゲームの音響担当というありふれた職についていたが、両親とは一切連絡を取っていなかった。



「あっ、この人カッコいいじゃん」


 そんな時だ。

 私のSNSアカウントにファンからの応援が来たのは。



「私は、あなたのファンです。路上ライブ時代からあなたの活躍を把握しています。

 特にあなたの曲である彼方への想いが大好きで、今でも時折聴いているんですよ」


「私が一番最初に作った曲じゃん」

 あまりにも昔のことなので、自分でも忘れていたくらいだ。

 ネットにアップしたこの曲がバズリ音楽家になることを決意したのは今ではよい思い出だ。



「応援ありがとうございます」

「ずっと活動がなかったので心配していました」

「じつな、会社に就職してそれ以来、ライブはやっていなかったんです」

「これからも、あなたのサイトをのぞいてもいいですか」

「もちろん」

 言い回しに、ややジジ臭いなと思いつつ、私は笑顔で頷いた。



「最近、芸能界でスキャンダルが話題になっていますね。

 とくに大物歌手のスキャンダルが衝撃的でした」

「その話題はうちの会社でも話題になりました」

「今日は温玉うどん、かつお節を大量にかけたものを食べました」

「同じような食べ方を昔、私もやってました」

「最近のお気に入りの曲は何ですか。

 私の場合テレビでのオープニング曲ばかり聴くようになりました」

「私の方でも最近はアニソン祭りですね」

「もし、機会があれば一度お会いたいのですが、ちなみに、私は群馬在住です」

「きぐうですね。私はそこ出身です」



 どういうわけか、この人とは色んな共通点があり、私はこの人との会話にのめり込んでいた。


 だからこそ。この話を見て、目を丸くする。



「あなたに謝らないといけないことがあります。

 実は、このアカウントで使っている情報はすべて嘘です。それと、がんが発見されて、余命宣告を受けました。もしよろしければ、これからも今までのようにお話できませんか」

「まさか...... 」


 不意に、私は今までのことを思い出した。

 昔からやっているうどんの食べ方。

 同じ出身地。

 そしで私のデビュー作を知っている。


「お父さん!」

 私は10年ぶりに実家の扉を叩いた。


「心配したんだぞ」


 罵詈雑言が返ってくると思ったのに。両親は私を温かく迎えてくれた。



「かっこ悪い姿を見せたな」

「本当にそうだよ。私と話したいならちゃんと言ってくれたらよかったのに」


 両親に連れられ病院に行くと、すっかりやせ細ったおじいちゃんがいた。


 そして写真の男性は隣のベットで入院していた大学生のものだった。


「お前と話したいがために嘘ついてごめんな」


「そんなのどうでもいいよ」

 こうして私たちはお互いに許し合い仲直りした。

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