第30話 開幕、アストラ魔導競技祭!
アストラ学園の広大な競技場。
観客席には、他国の王族、名家の魔導師、一般市民まで――
この日ばかりは誰でも入場が許され、年に一度の祭典が始まろうとしていた。
「はぁ……人、多っ……」
レンが目を丸くして見上げる。
彼女の頬にはほんのり汗が滲み、緊張と高揚が混ざっていた。
「まぁ、魔導学園の祭典だからな」
星牙は肩をすくめ、淡々と返す。
制服の上着を脱ぎ、簡易の魔導競技用ジャケットに腕を通す。
周囲の生徒たちがざわついていた。
「星宮……やっぱ出るのか?」
「去年の記録、抜く気かもな……」
「いや、今回は本気出さないって噂もあるぞ」
星牙はため息をつき、レンの方を向いた。
「そういう噂、どこから流れてんだろうな」
「星牙が強すぎるからだよ。去年、匿名登録で模擬戦上位独占したでしょ?」
「……あれは実験だよ。データ収集。」
「ふふ、言い訳うまくなったね」
2人の軽口が交錯する間にも、校長・星宮時継が観覧席の上段に姿を見せる。
その威厳ある姿に、全校生徒のざわめきが止んだ。
「諸君、今年も魔導競技祭の季節が来た!」
時継の声が、魔力を帯びて場内全域に響く。
「鍛錬の果てにあるものは、勝利ではなく成長だ。
――だが、成長には挑戦が必要だ。
今日ばかりは誇りをかけて戦え、若き魔導師たちよ!」
歓声が爆発した。
魔力が空を彩る。火・雷・風――数百人の魔法が同時に放たれ、空を巨大な光の幕が覆う。
開会式後、各競技説明が始まる。
・第一種目:魔導障壁走(チーム制)
・第二種目:召喚獣レース(個人戦)
・第三種目:魔法弓対抗戦(精密射撃)
・最終種目:総合魔導乱戦(バトルロイヤル形式)
「出場者、第一種目準備につけ!」
レンが振り返る。
「ねぇ星牙、今年はどの競技出るの?」
「……観戦。サポート枠」
「またそれ!? 本気出さないと楽しくないじゃん!」
「見てる方が勉強になる」
「むぅ〜、ずるい言い方〜」
そんな2人を見て、近くのクレアが苦笑した。
「ほんと仲いいわね。……でも星牙、本気出さないでよ?」
「出さないさ」
そう言いながら、彼の眼差しは一瞬だけ空を見上げた。
――その空の彼方に、何か“揺らぎ”を感じた。
だが、今はまだ誰も気づいていない。
競技祭の幕は、静かに、そして華やかに開かれた。
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