第28話 すれ違う手と、揺れる想い

朝の陽光が、教室の窓から差し込んでいた。

休日の翌日――いつも通りの授業、いつも通りの席。

けれど、レンにはどこか“違う朝”に感じられた。


「ねぇレン、昨日誰と出かけてたの?」

「え、えっと……ただの買い物だよ!」


隣の席の友人がニヤニヤしながら肘で突く。

「へぇ〜? なんか嬉しそうじゃない?」

「そ、そんなことないってば!」


そのやり取りを聞いていた星牙は、

机に肘をつきながら静かに本を閉じた。

ちらりと視線を上げたが、何も言わずに目を戻す。


(……別に、気にすることじゃない)


そう思うのに、

昨日の夕暮れ――あの一瞬の温もりが頭から離れない。

近すぎた距離、香り、声。

思い出そうとすればするほど、胸の奥が妙にざわつく。



昼休み。

学食はいつも通りの賑わいを見せていた。

星牙はいつものようにカレーを注文し、

レンと対面の席に座る。


「ねぇ、昨日のブレスレット……」

レンが言いかけた瞬間、星牙が言葉を重ねた。

「魔力の共鳴率、少し上がってる。効いてるみたいだな」

「……そう、だね」


言葉が噛み合わない。

ほんの少しのすれ違い。

でも、お互いその違和感を口にしない。


沈黙を破るように、レンが小さく笑う。

「ねぇ、今度さ……また訓練一緒にやろうよ。

 この前、私ちょっと遅れ取ったし」


「いいけど。俺に合わせられるなら」


「も〜、そういう言い方やめて」


「事実だ」


「……そういうとこだよ、ほんと」


レンは呆れたようにため息をつきながらも、

その表情はどこか嬉しそうだった。

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