第21話 ダンジョン第3層・東ブロック

巨大な転移ゲートの前。

無数の魔導陣が淡く光り、

学園の生徒たちが次々と中へ吸い込まれていく。


星宮星牙たちのチームも、その列の一つだった。


「この瞬間、毎回ちょっとワクワクするよね!」

レン・フレイムハートが胸を高鳴らせながらゲートを見上げる。


「ワクワクってより……腹痛くなる」

クレア・ウィンターフォールは引きつった笑顔で苦笑した。


「行くぞ」

星牙の短い一言に、二人は頷く。


光が弾けた――。


一瞬の浮遊感の後、足元に冷たい石の感触が戻る。

目の前には、淡い蒼光に包まれた広い洞窟。

壁面には魔力鉱石が散りばめられ、静かに明滅していた。


「……わぁ、きれい……」

レンが息を呑む。

その声がこだまして、空気に魔力の波紋を広げた。


星牙は片手を上げ、低く呟いた。

「【索敵展開オラクルサーチ】」


周囲に魔力の粒子が舞い、立体的な地図が浮かび上がる。

「この先に三つの通路がある。左が最短だが、魔力反応が強い」

「強い方が手っ取り早いでしょ!」

「短絡的だな……まぁ、嫌いじゃないが」


三人は左の通路へ進む。


足音が岩壁に響く中、

かすかに“金属を擦る音”が聞こえた。


「……止まれ」

星牙の声が低く響く。

次の瞬間、闇の中から鋭い影が飛び出した。


――ガギィィン!!


星牙の魔力障壁が瞬時に展開され、

それを受け止める。

闇の中から現れたのは、黒鉄の鎧を纏った骸骨兵(スケルトン・ナイト)だった。


「3体!」

「了解! 【爆炎弾フレアバレット】!」


レンの掌から放たれた火球が、

通路を赤く染める。

一体が爆炎に包まれ、骨片を散らして崩れ落ちた。


「さすがレン!」

クレアが即座に結界を張り、

もう一体の突進を阻む。


「【結界展開セーフゾーン】!」

光の膜が瞬時に展開し、剣撃を弾く。


その隙に星牙が静かに杖を振った。

「【重力斬グラヴィカット】」


音もなく、残る二体が地面に押し潰されるように沈み込み、

骨が砕ける音だけが残った。


……静寂。


「ふぅ……最初から飛ばすね」

レンが額の汗を拭う。

星牙は短く息をついて答えた。

「ここは序盤だ。油断すればすぐに終わる」


「ま、頼りにしてるけどね」

レンが笑う。

その明るさに、クレアも少し肩の力を抜いた。


「ねぇ、なんだかんだで、いいチームかもね」

「……今のところは、な」


星牙がそう言って通路を進む。

その背後、岩壁の影で、

黒い霧のようなものがゆっくりと揺らいでいた。


誰もまだ、それに気づいてはいなかった。

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