第19話 野外実践演習、始動

朝の講堂は、ざわつきと熱気に包まれていた。

天井を走る魔導照明が淡く光り、中央の立体ホログラムには

大きく【野外実践演習】の文字が浮かんでいる。


「今回は筆記じゃなく、実戦形式での評価を行う!」

壇上に立つのは、教師のクロード。

筋肉質な体に軍服のようなコートを纏い、鋭い視線を全員に向けた。


「演習内容は――《ダンジョン第3層・特別探索試験》。

 班を組み、制限時間内に“魔力核”を確保して帰還せよ」


ざわっ……と空気が揺れる。


「ダンジョン探索!?」「久しぶりじゃね?」「死なない程度に頼む!」

教室全体が一気にざわめきに包まれた。


クロードは続けた。

「なお、今年は学院長の提案により――

 異クラス混合チーム制を採用する」


その瞬間、あちこちから悲鳴。


「え、知らない奴と!?」「コミュ障に死刑宣告かよ!」

「ペアは教師がランダムに決定する。拒否は認めん!」


巨大ホログラムが回転し、次々に名前が映し出されていく。


【チーム構成】

チーム1:星宮星牙(S)/レン・フレイムハート(S)/クレア・ウィンターフォール(A)

チーム2:レオ・グラント(S)/セリナ・アルミラ(S)/???(非公開)

……


「おおっと!?」「まさかの星牙&レンペアきたぁぁぁ!!」

教室の空気が一気に爆発した。


レンが机をバンッと叩く。

「え、ちょ、なんで私!? 絶対わざとでしょ先生!!」

「偶然だ。AIが決めた」

「AIが空気読むなぁぁ!」


一方の星牙は、淡々とプリントを眺めながら言った。

「……まぁ、悪くない組み合わせだ」

「どこが!? 私、静かにテストしたかったのに!」

「静かに戦う演習なんてないだろ」


「理屈で返すなー!!」


そのやりとりに、周りが笑い出す。

一瞬だけ、講堂が平和な空気に包まれた――

その時。


壇上のスクリーンが一瞬、ノイズを走らせた。

数秒間、映像が乱れ、地図が“黒いもや”に包まれる。


クロードが眉をひそめる。

「……おい、映像班。何が起きてる?」

「不明です。魔力波の干渉が……通常値の四倍に跳ね上がっています!」


ざわ……


学生たちが不安げにざわめく。


その時、学園長・星宮時継が壇上に現れた。

白いローブを翻しながら、静かに言葉を紡ぐ。


「心配はいらん。――これは“偶然”ではない」


「……え?」


「この演習は、実戦に近い状況を想定している。

 予測不能な事態こそが、最良の学びになる」


講堂全体が静まり返る。

まるで“その瞬間”を見透かしていたかのような声だった。


時継の瞳は、どこか遠くを見つめていた。

――まるで、この先に何が起こるのか知っているように。

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