第18話 満点おめでとう!……って、なんで私まで!?

アストラ学園の食堂――

普段は学生で賑わうこの場所も、今日は特別仕様だった。


金色の装飾、浮遊する光球、長テーブルには学園シェフ特製の料理が並ぶ。

立札には大きく書かれている。


【定期筆記試験 上位者表彰パーティー】


「……おい、なんで俺がここにいるんだ」

「いや、1位だからでしょ!」

レン・フレイムハートが当然のように言い放つ。


「お祝いの席に来て文句言う人、あんたくらいよ」

「静かに飯が食いたいだけなんだが」

「はいはい。ほら、飲み物どうぞ」


レンが差し出したグラスには、魔力が微かに光るジュース。

炭酸の代わりに微弱な魔力反応で泡立つ“魔導ソーダ”だ。


「おーい!レン、星牙!こっち座れよ!」

Sクラスの仲間たちが手を振る。

レオとクレアも笑顔で席を空けてくれていた。


「いや〜、やっぱ星牙が1位だと食堂の空気違うな〜」

「私、次こそ5位以内狙うから!」

「……やめとけ、採点魔法がまた壊れる」


周囲がドッと笑う。

星牙は肩をすくめて苦笑いを返した。


そんな中、学園長・星宮時継が静かに入ってくる。

ざわめきが一瞬で止む。


「皆、よく頑張ったな」

時継の声は穏やかで、それでいて全員の心に届く響きを持っていた。


「知識は力だ。だが、それをどう使うかは“心”が決める。

 ――忘れるな」


その一言に、食堂の空気が引き締まる。


だがレンは、そんな空気をぶち壊すように口を開いた。

「ねぇ学園長、質問!」

「なんだね?」

「次の実技試験、また筆記だけとか言わないでくださいね!」


「……それは無いな」

「ほんとですか!」

「次は“野外実践演習”だ」


ざわ……


学園中が一斉にどよめく。


「フィールド……実戦!?」

「マジか! 期末前にそんなの!?」

「やったー!筆記より全然マシ!!」


星牙はグラスを軽く揺らしながら、窓の外を見た。

「……やれやれ。静かに食事するのは、当分無理そうだな」


レンが笑う。

「いいじゃない。どうせ退屈してたでしょ?」

「……まぁ、少しはな」


夕陽が差し込む食堂。

笑い声と喧騒の中、

ほんの一瞬だけ、星牙の瞳が“星光”に揺れた。


それを見たレンは、言葉を飲み込んだ。

――あの光。

黒龍封印の夜に見た、あの輝きに似ている。

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