第17話 満点の天才と、不満顔の紅蓮

三日後の朝。

アストラ魔法学園の講堂には、全学年の生徒たちが集まっていた。


年に数回行われる定期筆記試験。

上位十名の発表は、毎回ちょっとしたお祭り騒ぎになる。


「うわー、人多すぎ……」

「講堂に入れない奴もいるって、どんだけ気合い入ってんのよ」

レン・フレイムハートは、ため息混じりに列の後ろから覗き込んだ。


巨大なホログラムスクリーンに、名前が順に映し出されていく。


第10位 アイゼン・クロード(Bクラス)

第9位 ミラ・レヴィン(Aクラス)

第8位 カイ・ラグナス(Sクラス)

第7位 クレア・ウィンターフォール(Aクラス)

第6位 レオ・グラント(Sクラス)

第5位 リリス・ヴァンデール(Sクラス)

第4位 由璃・セレスティア(生徒会長)

第3位 セリナ・アルミラ(Sクラス)

第2位 レン・フレイムハート(Sクラス)

第1位 ――星宮星牙(Sクラス)


「……あぁ〜、やっぱり。」

レンは頭を抱えた。


「またあんたかー!!」


隣で静かに立っていた星牙は、何事もなかったかのように両手をポケットに入れたまま。


「別に競ってるつもりはないけどな」

「こっちはめっちゃ競ってんの! もう! 満点とか人間じゃない!」

「失礼だな」

「褒めてるわよ!」


レンの叫びに周囲の生徒がクスッと笑う。

それでも誰も文句を言えない。

――満点1位。

それは“知識だけで誰も追いつけない”という証。


壇上に立った星宮時継(学園長)は、

少し誇らしげに笑いながらマイクを取った。


「第1位、星宮星牙。――全問正答。採点魔法を壊したのは、今年で3度目だ」


ざわ……とどよめきが広がる。


「採点魔法を壊すって何!?」「意味が分からないレベルだろ!」

「魔法が耐えきれないほどの正答率、ってことだ」


レンが目を細めて星牙を見た。

「……ほんと、どこまで反則なのよ」


星牙は軽く笑って答えた。

「さぁ、次はレンの番かもな」

「はっ、言ってなさい!」


講堂の天井から魔光が降り注ぎ、

光の粒が生徒たちの髪を照らす。


穏やかな空気の中、

ほんの一瞬だけ――

時継の表情がわずかに陰った。


(……やはり、“星の才”は眠らせておくべきだったかもしれんな)


その思考は、誰にも知られない。

ただ、ひとりの祖父として。

少年の背に、これからの運命の重さを感じていた。

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