第15話 いつもの朝と、少しだけ違う空
黒龍封印のニュースから一夜明けた朝。
アストラ魔法学園は、まるで何もなかったかのように平穏な顔をしていた。
「昨日のニュース見た? 黒龍が封印されたって」
「また誰かがオーバーに言ってるだけじゃない?」
「でもあの光、マジで見たんだよ。空に星が咲いたみたいな――」
教室のあちこちでそんな会話が弾んでいた。
星宮星牙はというと、いつもの席で静かにノートを取っていた。
筆圧も声も変わらず、
ただ“空気だけ”が違う。
彼の机の周りだけ、妙に距離が空いている。
好奇と畏怖が入り混じった視線を感じながらも、
本人は無表情のまま淡々とペンを走らせていた。
「ねぇ、星牙。今日の実技、結界魔法だって」
隣の席のレン・フレイムハートが声をかける。
「うん。……ちょうど気分転換にいいかもな」
「ふふ、あんたが気分転換とか言うの珍しい」
レンはにやりと笑い、前のめりで机に肘をついた。
その笑みの裏には、昨夜の映像がちらついている。
――あの光。
彼の使う魔法の色と、どこか似ていた。
「……なんでもない」
レンは自分の頬を軽く叩き、視線を逸らした。
「何が?」
「別に。気のせい!」
チャイムが鳴り、授業が始まる。
教師が教壇に立つと、ホログラムボードに文字が浮かんだ。
【次週より――定期試験開始】
「うげっ……またテスト!?」
教室が一気に騒がしくなる中、
星牙だけが小さく息をついた。
「……やれやれ。結局、平和ってのは騒がしいな」
そんな彼の呟きに、レンがくすっと笑う。
「じゃ、平和を守るために、今日も授業頑張ろっか」
窓の外――
あの日封印された黒龍の大陸の空に、
小さく瞬く星がひとつ。
それに気づく者は、まだいなかった。
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