第49話 再会の宮殿
「ここは――時空の歪みに存在する宮殿だそうよ」
オクタヴィアの声音は淡々としていて、感情の起伏を感じさせなかった。
アウレリウスは目の前の光景を信じきれずにいたが、彼女は淡々と続きを語る。
「帝国に拉致された直後、この《白き契約の会》に救出されたの。帝国と敵対しているのだそうよ。彼らは古代の術と知識を守り続けていて、この歪みの中にある宮殿を拠点にしているらしいわ」
オクタヴィアは歩きながら、指先で壁の模様をなぞる。光を宿したように美しい装飾が、彼女の白い指の下で柔らかく輝いた。
「すぐにでも戻るつもりだったのだけれど……彼らに泣きつかれてしまったのと、私も帝国には散々腹が立っていたから。だったら徹底的に叩き潰す計画をまとめて持ち帰ってやろうと思って、ここで話を詰めていたのよ」
言葉は落ち着いていたが、その瞳には確かな怒りの炎が宿っていた。
アウレリウスは呆然と彼女の説明を聞いていた。
けれど、彼女の声が途切れた瞬間、抑えきれなかった。
「――ご無事で……良かった……!」
気づけば彼は、オクタヴィアを強く抱きしめていた。
胸の奥からあふれ出す安堵と緊張の解放に、腕の力が震える。
オクタヴィアは一瞬驚いたように目を見開いたが、すぐにそっと彼を抱き返した。
その仕草は静かで、だが確かに、彼女の心臓の鼓動が伝わってきた。
「……心配、かけたわね」
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