青春の再会
ただの学生
第1話
今でも思い出す数年前のこと。僕がまだ高校生だった時のこと。多くを学び多くを得たあの時のこと。でも最後の一歩を踏め出せず本当に欲しかったものを逃したあの時のこと。
これは今でも後悔している僕の高校時代の話だ。
高校の入学式。僕、隅田康二(すみだこうじ)は
隣の席の子に一目惚れをした。シミひとつなく圧倒的なまでに美しい白い肌、童顔だがしっかりと鼻筋が通って可愛いと美人が共存している人形とも思える様な、そんな顔。その横顔に僕は恋をした。
そんな僕の思いは関係なしに入学式は進んで行く。校長先生の話。担任の先生の発表。先輩からの言葉。普段の自分ならこれからの生活の希望を胸に聞いていたであろう大切な話も右から左へと通り過ぎて行った。
「新入生代表、白雪鈴音」
おそらく学年主任であろう先生が発したその言葉に返事をするように隣の席から「はい!」というまるで鈴の音を思わせるとても綺麗な声が新入生の期待と不安で満たされている体育館に響いた。
そうして彼女、白雪鈴音は先生や新入生、代表として選ばれた先輩方の視線を受けながらとても美しい佇まいで壇上へと登った。
日本には古来から名は体を表すということわざがある。これは、「人や物の名前は、その実体や性質をよく表している」という意味である。
僕はこのことわざを信じていなかった。なぜなら、これまでそのような人物や物に出会ってこなかったからだ。しかし彼女の雪を思わすような白い肌。鈴の音のごとき声を聞いた僕はその考えを改めた。それほどまでに白雪鈴音は名は体を表すを体現していた。彼女の所作に。彼女の出す声に。体育館にいた人たちの視線は釘付けにされていた。
程なくして入学式は終わりを告げた。入場した時とは逆で7組から体育館から退場していく。僕たちは1組の為最後まで体育館に残っていた。
ついに僕らが退場する時が来た。新入生の親や先生、先輩方の拍手の中、僕ら1組は教室に向けて歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます