第5話

 日曜日。

 男と女は、繁華街にある美容院にでかけた。

 店内は明るくて、洋楽のBGMが静かに流れていた。

 若いお洒落な美容師が、言葉巧みに器用に手を動かしている。

 客層も二十代が、圧倒的に占めていた。

 さすがに男は、気後れしていた。

「なんだか、恥ずかしいな」

「何、言っているの」

 女は笑った。

「年寄りが、行く場所じゃないな」

「もう、そんなこと言って」

 そんな話をしているところへ、女性のスタッフがやってきた。

「お待たせしました!こちらへ、どうぞ」

 男は案内された席へ連れて行かれ、女と離れ離れになった。

 男は、少々情けない顔をしてイスに座った。

「こんにちは。今日は、どうなさいますか?」

 美容師の言葉に、男は覚悟を決めたのだった。


 二時間ほど美容院で過ごした男と女は、見違えるほど若返っていた。

 男の髪は白髪から黒い色が混じったグレーになり、髪型も短くさっぱりとなった。

 女も白髪混じりの髪を栗色に染め、髪型も今風の女らしくしてやっと年相応に見れた。

「お腹空いたね。何処か、食べに行こうか」

 男の言葉に、女は喜んだ。

「外食なんて、久しぶり。嬉しい!」

「そうか」

 男は、女の肩を抱いて歩き出した。

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