第2話 ムカつくイケメンだな、怪しい奴め
騒動があった翌日、既に陽が落ちて夜が暗くなった中庭のベンチでベンチに座っているルーシーをみかけたので声をかけてみた。
「ようルーシー、隣いいか?」
「え?あ、ええ・・・いいわよジョナサン」
俺がそばに来ても声をかけてやっと気づくというような様子なので、なんか変だなと思いつつもその隣に座る。
「まどろっこしいのは嫌いだから単刀直入に聞くけど、なんでミーナを皆の前で断罪なんてしたんだ?お前とミーナは親友だろう」
「親友?えぇ、もちろんそうよ!
ミーナは小柄ですべすべしていてほっぺたも柔らかくて、小動物みたいでとてもかわいく抱きしめるとほんのり暖かくて天使のように可愛い私の親友だもの。男の子は男の子同士、女の子は女の子どうして仲良くするといいと思うの」
「・・・じゃあなんでそんな親友に冤罪をかけたんだ?」
「冤罪?違うわ、・・・ミーナは下級生の子をいじめていたのよ。
あの子たちが私に涙ながらにそう訴えてきて、親友の私から言ってほしいといわれたんだからしょうがないもの・・・あれ?でもミーナは親友で、でも糾弾しないといけなくて・・・心がふたつあるー??」
これは確かにルーシーの様子がおかしいな、と思ったところで俺達に向かって声をかけてくる奴がいた。
「やぁルーシー、こんなところにいたのかい?夜風が体を冷やすといけないから部屋に戻ろう、送るよ」
癖毛の銀髪の、色白で線の細い男子がそこに立っていた。いつからいた?気配を全く感じなかったぞ。この顔には見覚えがある、たしかキュラドとかいったな。
「お前は留学生のキュラドか」
「そういう君はジョナサン・ハンカー。校舎裏でたむろしている無能な“最低野郎”達の一人が、学園きっての美少女のルーシーに随分と気安いんじゃないか?カスの分際で身の程を知りたまえよ」
路傍の石かゴミでも見るような目でこちらを見下しながらルーシーに手を差し出すキュラド。女子には優しく男子には失礼な嫌味野郎ときいていたけれどうわさ通りの奴だな。
「初対面だってのに随分と失礼じゃないか」
「礼というのは価値ある相手に対してもつべきものだからね。あ、これは君が失礼な対応で十分な、無価値なクズだって意味だけど“最低野郎”の君の頭にこの皮肉は通じるかな??」
そんな風に言い合う俺とキュラドの様子にもルーシーは気づかない様子で、差し出された手に自分の掌を乗せて立ち上がる。
「夜風?そうね。・・・それじゃあジョナサン、ミーナによろしくね」
キュラドに手を取られて、おぼつかない足取りで去っていくミーナの背中を俺は怪訝に思いながら見送るのだった。・・・あとあのキュラドの奴は絶対どっかでぶっ飛ばそう。俺はやると言ったらやるぞ。
そしてそんなやりとりがあって程なくして、ミーナは騒ぎの真偽がはっきりし審議がおわるまで謹慎とされた。
「ジョナサン、私・・・ルーシーが言うようなことはしていないわ。悪役令嬢なんて言われるような事、してないわ、信じて・・・!」
「知ってるよ。
君が他の女の子に嫌がらせをするはずがないし、君が俺以外の男で満足できるはずがない事も知ってる。何年一緒にいたと思ってんだよ疑う訳ないだろ、幼馴染なんだぞ。
他の誰が何と言おうと俺はミーナを信じてるし冤罪は絶対に晴らしてやるからいい子で待ってな」
「えっ?!うぅっジョナサン・・・未だ昼間なのにドキドキしちゃう。頭がフットーしそうだよぉっっ」
この騒動が落ち着いたらその分まとめて大満足させてやるさ、と約束して、自宅謹慎で一旦学園を離れることになったミーナを見送った。
「まったくラブラブなことで。あーはやく俺もルーシーとラブラブしたいぜ。あのたわわでばるんばるんする2つのやわらかいお山をこの手におさめたい。きっと胸が弱いはずだからなヌルッフッフッフッフ」
「うん?ルーシーは胸より脇腹の方が弱かったような・・・」
鼻の下を伸ばしてせっかくのイケメンを台無しにしている残念なモーリスがだだ漏らしにしている欲望に対して、アーサーが首を傾げている。幸いにはモーリスもジャックもルーシーの豊満なお胸にたいする猥談で盛り上がっていてアーサーの様子に気づいてないけれど、・・・もしかしなくてもアーサーとルーシーって・・・。だとすると他の二人がそれを知ったら脳破壊されてしまうのでは?
・・・まぁいいか。
それから2週間ほど、俺達はルーシーの周囲などを調べたりしていたけれど、アーサーもルーシーには違和感を感じたようだった。
「なんかうまくいえないけど、ルーシーの筈なんだけどルーシーじゃない感じがするんだよ。言葉の返しだとかふとした仕草だとかがなんだか違うんだ。話している内容もまるで別人と話しているようでさ・・・」
「そういえばルーシーが最近、留学生のキュラドにしきりに声をかけられていたらしいぞ。ヴァルアキュア公国から来たっていう容姿端麗文武両道の気に入らねえイケメン野郎だ。肌が弱いとかで日中に屋外での授業はうけない色白のモヤシで死人みたいな奴なんだけど、何が美白だ黒光りする筋肉こそ最高だろうが、あとモテるやつは皆くたばればいいよな!!」
ジャックが憤慨しながらいっているけれど人をひがむより先におまえは筋肉馬鹿なのをどうにかした方がいいと思う。
それに事あるごとにパンツ姿になって肉体美をアピールしようとするのも暑苦しくて女子に持てないから辞めた方がいいと思うけど今は黙っておこう。
あとキュラドに関しては俺もこの間喋ってイラッとしたし、もし今回の事件に関係なくても何か言い負かすネタが見つかったらラッキーだと思うのでちょっと調べてやりたい。
「セクシーボインちゃんのルーシーの変貌を考えると確かにキュラドが怪しい。頭の先から指先まで筋肉で出来ているジャックにしては上出来じゃないか」
「へっ、任せな!これが俺の上腕二頭筋、さらに俺の僧帽筋、そして自慢の・・・・大胸筋だッ!!」
0.01秒で服を脱ぎもっこり黒パンツ1枚になったジャックが流れるように筋肉をアピールするポーズを決めていくのを無視して、ジャックを除いたメンバーで顔を突き合わせながら話を進める。
「―――アーサー、モーリス。キュラドを探るにしても俺達に使える手札はあるか?」
「ジャックが使う固有の魔法は多分何の役にも立たないだろう、身体から太陽の光を発する眩しいだけの技だしな。けど俺の画像保存(パパラッチ)は見た光景を転写する事が出来る。・・・あとはどうやってキュラドに近づくかだ」
「俺にいい考えがある!俺の使う固有魔法、猫化光線はどうだろう。短時間だけれど他の生き物を猫にする光線魔法で、ジョナサンとモーリスを猫にしてキュラドの周囲を探るんだ」
モーリスの言葉にアーサーが提案をする。成程、ねこになって近づいてキュラドの周囲の怪しい事をモーリスの魔法で記録する。いいじゃない!
「・・・いいアイデアではあるな。動物の姿なら警戒されずに周囲を調べることができる」
「けど猫化光線には欠点があって、衣服とかは猫にできないから猫になる時も人になる時も全裸になるんだ」
「一歩間違えたら露出狂の変態か」
「尊厳が崖っぷちになるけれどこの際贅沢は言ってられないだろう。やるか、モーリス」
「・・・仕方がないな」
そういいながら俺とモーリスは校舎裏で服を脱いで裸になるのだった。猫になる為だ、仕方ない、仕方ないんだ・・・!!
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