特になんの変哲もなかった俺が、隣の席の「不思議ちゃん」と恋をするだけの話。
らむね!
第1話 未知との遭遇?
いつも通り、電車に揺られる…
あまり予定のなかった春休みも、もう過去の話だ。
今日から新学期が始まる。
できれば、このまま平穏に終わってほしい。
前の年はうまく行ったんだ。今年もなんとかやってけるはずさ。
そう自分を鼓舞しながら、学校の近くの駅に降りた。
通学路の街路樹の桜のつぼみが今にも弾けそうに膨らんでいる。
新学期を祝福したかったらしいが、開花は間に合わなかったようだ。
「今年は気温が低かったからなぁ…」
ポツリとつぶやいてみる。まあ誰かが聞いているわけでもない。単なる俺の独り言だ。
新学期に若干の期待を込めた俺の言葉を遮るように、どこか間の抜けた声が、やけに近い場所から聞こえた。
「桜って、2月1日からの日最高気温の合計が600℃に達した頃に開花するらしいよ。不思議だよね。」
!?…………おい、今の独り言だぞ!?前言撤回、めちゃくちゃ聞かれていた。しかも、科学の先生が時々挟んでくるような妙に頭の良さそうな豆知識付きで帰ってきた。
若干赤面しながら振り向くと、そこには俺と同じ学校の制服を着た女子が立ってた。
…
知っている。知らないフリで乗り切れるだろうか。
去年、先生を無意識の内におちょくったことで若干話題になった、あの「天然で不思議な奴」だ。
正直、平穏に過ごしたい俺にとってはあまり関わりたくない。
彼女は俺に気づくと、パッチリとし大きな瞳を向け、にこりと笑った。
「おはよう!今日から1年よろしくね!えーと、ホムラくん…だっけ?」
ん??
待ってくれ。今なんと?あとなんで名前把握されてるの?
聞きたいことは多いが、とりあえず挨拶をしておくことにした。
「おはよう。⋯…なんで一緒ってわかるの?」
おっと、こらえきれずに質問まで出てしまった。
そんな問いに彼女はさらっと答えた。
「クラス表見てきたから。」
ん?
「待ってここ高校への通学路だよ!?高校まであと1km!そんなこと知ってるわけないって普通!?」
「Lineで送ってもらったから」
「あぁっ、なんだなるほど…」
友達は多いらしいし、そんなこともあり得るか。
そして、何食わぬ顔でついでにこう言い放った
「新任の先生に」
ん????
待ってくれ。頭の整理が追いつかない。
「新任の先生に…は!?…えっ…」
「そうだよ〜。あっうちのクラスの担任になるらしいよ。」
「だからなんで分かるんだよ!?」
…やばい頭おかしくなりそう…
「ひみつ!」
彼女の顔が急に近づいてきた。びっくりして後ろに仰け反ってしまった。
悔しいことに、少しドキッとなってしまった自分がいた。
(なんでこんな奴に!?)
……焔は考えるのをやめた。
当の本人は仰け反られたことに対して若干驚いて、少しおかしそうにくすくす笑っていた。
「あっ神奈ちゃん!」…多分友達であろう女子が、小走りでやってきた。
「また教室でね!」いい笑顔でとんでもないことを言い残し、そのまま連行されていった。カバンには謎の麻袋がかけられていた。
何入ってんだよ一体。米か?
…いつの間にか普段と変わりない空気が流れている。
なんというか、うん。
やっぱり俺は女子に対する耐性を持ち合わせていないな…
そんな事を考えながら俺はまだ冬の寒さが少し残る学校への道を急いだ。
◇◇◇◇◇
教室に見慣れた顔がちらほらあり、若干安心した。
ガヤガヤと騒がしく談笑しているクラスメイトたちの中で、ひときわ大きなメガネが、俺の存在に気づいたみたいだ。
センター分けの茶髪をなびかせながら眼鏡のデカブツ、
「よ!また同じクラスだな。」
「お前もいるのかよ。(笑)」
「えっ僕とホムっちって一心同体じゃん!?」
「やめろ気持ち悪いw」
男子中学生みたいな、偏差値の低い会話が続く。
こいつとだけは仲いいんだよなぁ。
正直唯、一親友と呼べる存在だと思う。まあそれはそうと、
「スケ、俺の席どこだか知らない?」
「見てこなかったん?」
「色々あって忘れちゃって…」
少し思い出す時間をおいてからスケは言った。
「あっ!一番うしろの窓席!」
「おっ主人公席j」「の一つ前の席!」
トラップじゃねえか。
「ふっ、ちイなみにぃ主人公席はン僕だよ!」
「お前後ろなのか。あとその喋り方やめろ。」
なんのアニメをもととしてるかわからないが、とりあえずやめてほしい。
まあ仲がいいやつも周りにいるし、あとは島崎という爆弾が遠くに設置されていることを祈るだけだ。
その時、扉が開くとともに、澄んだ声が聞こえてきた。
「みんな、おはよぉ〜!」
……噂をすれば地雷がやってきた。
「あっ神奈ちゃん!」
「神奈ちゃんだ!」
嗚呼、俺の席の前の方に座っていた女子が、地雷に引き寄せられていく⋯
それにしても相変わらず友達は多いんだなぁ…
そんな事考えてたら、急に隣の席の机に、謎の麻袋が降ろされた。
「えっ?」
驚いている俺に向かって彼女は言った。
「焔くんだったよね。隣だったんだ!これからしばらくよろしくね!」
可愛らしい満面の笑みで、そう告げられた。
…平穏は終わった。だが、なぜか胸の鼓動だけが、不思議とこれからを望んでいた…
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