第一部一章三話冒険者生活⑤
◇◇◇◇◇
「うぐぐ…腰が痛い…」
「イル!サボるな!
そこ、まだ全然進んでないであろう!」
ブレーブダンジョン。
今、ニ人はまさに、夢にまで見た!
ブレイブダンジョンに来ている!
町から一刻ほどの距離に"それ"は聳えていた。
渓谷の谷間、大滝が落ちるその滝の裏に
更に渓谷が連なり、
陰鬱と聳える崖の奥に…
大きく不気味な口を開けるように、
そのダンジョンは存在していた。
本来は大自然に囲まれた
閑散とした場所だろうが…
しかし、数百年もの間、
冒険者が攻略に挑んできた
そのダンジョン付近は妙に
整備され、一種の観光地と化していた。
なんなら、ダンジョン付近に出店が立ち、
見物人の観光ツアーまで組まれていた。
リーンとイルが受けた依頼は…
まさにその観光業者からの依頼だった。
依頼内容…草むしり。
「ブレイブダンジョンまで来て…
草むしりって!なんなんだぁぁ⁈」
イルは不満を精一杯叫ぶ。
しっかりと手は草を刈りながら。
「ふむ。
我らまるで見せ物みたいだな…」
「みたい、じゃなくて完全そうだよ〜!」
ギルド職員は実に優秀だった。
駆け出し冒険者の行動や、
実力をしっかり把握し、見極めていた。
練習場にちょくちょく顔を出し、
彼なりに努力してる様を見ていた職員だったが…
確信する。
やはり、イルはまだまだ実力不足だ…と。
周囲には冒険者がチラホラと
ダンジョンを出入りしている。
ニ人への依頼は…
そのブレイブダンジョン入り口付近の
除草作業だ。
「いやぁ、おニ人さん精がでるねぇ?
やっぱりダンジョン入り口って
顔に当たるから…
見た目清潔な方がいいよね!
俺ら、これからダンジョン攻略だから…
お互い仕事頑張ろうね!」
武装した同業者パーティが
そう言いながら、
颯爽とダンジョンへ入っていく。
イルは悔しくて涙目になりながら、
半ば八つ当たり気味に草をむしっている。
仕方のない事だ。
実戦経験のない初心者剣士と、
いくら"レベル定義不能"プレートを
持つ者だとて、
攻撃手段を全く持ってない、
自称術法士のコンビでは…
ギルド職員も危険な依頼は
斡旋できないだろう。
いや、そもそもからして…
問題外なほどニ人が弱いからなのだが…
「まぁ…我はともかく、
キサマには良い仕事ではあるだろう」
「ええ?どこが…」
少し不貞腐れ気味にイルは尋ねる。
◇◇◇◇◇
(冒険者生活⑥へ続く)
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