第一部一章三話冒険者生活②
◇◇◇◇◇
「方々の地のドワーフ族から?」
…ドワーフ族。
大地と共に生きる世界三大種族が一つ。
鉱脈採掘や錬成を得意としている種族だ。
ドワーフ族…といえば…
イルにとっては、
思い当たる人物が一人いた。
前世の遠い過去を振り返る…
「ドワーフといえば…
ドューイのアイテムコレクションは
凄かったなぁ」
それを聞いたリーンは、
珍しくニンマリと頬を綻ばす。
「まさに、それだ。
奴が過去に同胞に口添えして
くれてたみたいでな、
だからドワーフ族が
我を世話してくれてるのだ」
「世話って、どんな?」
まさか召使いではあるまいし…
リーンの旅の共として、ドワーフを
見かけたことは一度も無いはずだ。
「我はあれからずっと旅をしているからな。
住む場所の提供などは無理だからと…
旅の資金がてら、
貴重なアイテムを持たせてくれる。」
ドワーフは元来、金まわりにはシビアな
種族だ。
豪快な性質とは裏腹に、
金を貸したり、奢ったり…
そのような所謂、
気前が良いと言われる事を
良しとしない感性を持っている。
他の種族からは、ケチだのと
心無い野次も飛ばされるが、
質実剛健な気質が彼らを
表現するに正しい言葉だろう。
「そうか…アイツ、僕にはケチだったけどな!」
「日頃の行いの差だろう?」
リーンに釘を刺されて、
思わず飲んでた水で咽せながら、
苦笑いのイル。
前途の通り、ドワーフは気前が良い訳ではない。
だが、真に心が通った相手には、
出し惜しみなどしないのだ。
リーンの身を案じ、
かつての仲間は、自身の財を投げて
支援することを選んだ。
イルも…
リーンを支援したい気持ちは奴と同じだ。
アイツは今…どうしているのか…?
リーンに聞かずとも、
絶望的なこと…なのは、分かっている。
二人の会話が暫し途切れる。
イルは食事を進め、
リーンは眠そうに周囲の喧騒に
耳を傾けていた。
ニ人はそれぞれに
過去の仲間達に思いを馳せた。
今はもう、会えない大切な仲間達。
ある失敗で…我ら、パーティは全滅したのだ。
イルも仲間の安否を確かめる術もなく、
意識を手離し、今に至る。
仲間達は今…どうなっているのか?
イルは…
未だに怖くて仲間のことを聞けないでいた。
リーンを主とし、
寄り添っていた奴らだ。
もし、無事だったなら…
リーンは今頃たった一人で旅など
していない筈だ。
そんなことを考えれば、
イルの気持ちは更に沈んでいくが…
だが、終わってはいない。
まだ挽回するチャンスはある…
"その命運を握るは、彼女"
イルは静かな眼差しで"彼女"を見つめた。
◇◇◇◇◇
(冒険者生活③へ続く)
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