番外おまけ編[ロジカル部の秘密]
(新入部員歓迎パーティーにて、宗教トークが終わったあとの雑談の時間にて……)
ユカ先輩の視線が、リチとカサネに向かう。
「……あなたたち。うちの変わり者集団に、よく耐えたわね」
割と一番の変わり者はユカ先輩だと思いますよとは言わなかった。
リチが肩をすくめた。
「楽しいですよ? 最初はちょっと怖かったですけど」
「でしょうね」
ユカ先輩が小さく笑う。
「でも、それはロジカル部の“文化”なの」
部室が静まり返る。
ユカ先輩は、まるで大学の講義のような調子で語り出した。
「この部、今女子部員が多い理由って、知ってる?」
「まずね、男子は大抵、“女子だらけの部活”ってだけで構えるのよ」
「まぁ……そうですよね」とリチが頷く。
「で、体験入部に来た男子の半分は“女子と話したい”が理由。
でも、ここでいきなり宗教とか倫理とか、死刑制度の話を聞かされるわけ」
「なるほど、たしかに……」
俺は最近の部活議論を思い出す。割とヘビーなものばかりかもしれない。
「で、ほとんどは一時間で消える。話の深さに耐えられないの。“可愛い子と話したい”が、“思考で殴られた”に変わる瞬間」
笑いが起きる。シオリ先輩が机を叩いた。声がデカい。
「そりゃそうだろ、入部初日に“殺人未遂は死刑でいいか”とか聞かされたら、誰でも帰るぞ!」
「そうそう。だから残るのは、恥ずかしくても本気で考えるやつだけ」
ユカ先輩の声が少し低くなる。
「つまり、“議論で居場所を作れる女子”と、“それに惹かれる少数の男子”。このバランスが、この部の独特の空気を作ってるのよ」
「あなたたち新入生、もう立派なロジカル部員ね」
「ふふ、ありがとうございます」
シオリ先輩が俺と花空リチの間に近づいたかと思うと、耳打ちのジェスチャーでこちらを誘ってくる。
「良いかー?本人には聞かせるなよ?さっきの話には続きがあってな。たいてい思春期の男子なら死刑制度トークを耐えきってこの女子の花園に居座ろうとするんだ。そこで開く新入生パーティで………ユカ先輩の宗教議論が始まるってわけだよ!」
最後の方、声がデカいせいで普通にユカ先輩に聞かれてるし俺達の耳は片側が御陀仏になったわけだが……このロジカル部の秘密が理屈で、ロジカルで解明されたことに喜びと関心を得た。
「聞こえてるわよ?シオリ。」ユカ先輩がわざとらしく笑う。
シオリ先輩はわざとらしく頭をかく
「あちゃ〜?バレてたか〜!堂々と言わせてもらおう!話を逸らすぞ!ユカ先輩。来週からのロジカル部ですが、先ほどの話を軸に、『信じること』について話そうと思うんです!ユカ先輩は出席しますか?」
「あら。いいテーマね」ユカ先輩はそう頷く
「でもやっぱり遠慮しておくわ。来週から模試が続いてしまうのよ。受験とも絡み合ったいいテーマだと思うけれどね。」
「ちょうど受験って、“自分を信じる”訓練みたいなものだし」
シオリ先輩は残念そうな顔をするが、すぐにいつもの快活な顔に戻る。
「残念ですが、仕方ないですね!そういえばユカ先輩、受験どうですか?」
「う~ん。苦行よ」
そう言って、ユカはどこか楽しそうに笑った。
理知的な君は恋を知らない @Oshiooshiozisan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。理知的な君は恋を知らないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます