カサネのトラウマは拭えない

何百回も見てきたドア。いや、実際には一回しか見てないんだけれど、夢で何回も反芻してる。


すぐにわかる。これは夢だ、悪夢だと。


まぁわかってても抗えない。この夢じゃ体は動かないんだ。


「しょうがなく」ドアを開ける。目の前に座っている男は心底俺を不思議そうに眺めて、、、、






『誰?』








意識が浮かび上がる。

 闇の底から引き上げられるようにして、カサネは目を開けた。


 夢の中で、言葉が溶けていった。

 理屈が崩れ、世界がただ“感情”だけでできているように見えた。

 ――その世界は、醜かった。怖かった。


 カーテンの隙間から射す光が、まぶしく感じる。


俺は自分の意見が間違ってない、なんて微塵も思ったことはない。

人という脆い存在が、自分が正しい価値観を持てているか。それを再確認できる議論はとても好きだ。

だから昨日の議論はとても有意義だった。


そこで少し信じたくなった、信じてみたくなった。

だからこそ、また今日、あの悪夢をみてしまったのだろうか。



 「説明……できないことを……信じる、か」




 自嘲のように呟いて、カサネはゆっくりと額を押さえた。

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