圧倒的筆致で描かれる「至高のSFファンタジー」

本作を貫くのは、安易なテンプレートや流行を拒絶し、ひたすらに「緻密な世界構築」を追求する孤高の美学です。これほどまでに重厚な独自の世界観に浸れる贅沢は、他では決して味わえません。

近未来の中華風世界という舞台装置に加え、宇宙進出、AI統治、そして「百貨店の外商部員がエージェントとして戦う」という独創的な設定。その圧倒的なディテールは、もはやアマチュアの域を遥かに凌駕しています。ライト文芸の枠には収まりきらない、講談社文庫や新潮文庫などの棚に並ぶべき格調高い文体に惚れ惚れしました。

主人公の楊さんも最高に渋い!過去の栄光に縛られず、ハードボイルドに任務をこなす「大人のかっこよさ」に溢れています。 一方で、ヒロイン・柘榴(ざくろ)の存在感も底知れません。彼女の謎はあまりにも深く、物語が進んでも容易には全貌を見せない——。この「あえて核心を隠し続ける演出」が、読者の飢餓感を煽り、楊さんと共に彼女の真実を追い求めたくなる絶妙な没入感を生んでいます。

さらに、『銀河英雄伝説』への敬意を感じさせる描写もあり、SFファンなら「ニヨニヨ」が止まらない仕掛けも満載。

「流行を追うのではなく、物語の深淵を覗きたい」 、そんな本物志向の読者にこそ手に取ってほしい、重厚かつ鮮烈な一作です。

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