売り上げ底辺なおっさん販売員。果たしてその正体は……!?
- ★★★ Excellent!!!
宇宙コロニーの中心にそびえる、壮麗な百貨店。宇宙のセレブたちをお迎えする(でもご安心を。ちゃんと地下惣菜売り場はあります/笑)その巨大市場の名は、『蓬莱百貨店』。
しかしこの煌びやかなフロアでひとり、どうにも販売員には似つかわしくない男が今日も腕時計を磨いている。顔を縦断する大きな傷に、スーツが違う方向に迫力を持ってしまいそうな無精髭。身内向けといえどもぶっきらぼうな言葉遣い。噛みつきそうな危険な雰囲気がありながらも自らを「コロニーの犬」と呼ぶそのおっさんこそ、主人公の楊(ヤン)。
時計売り場を担当する販売員でありながら、彼はコロニー内の危うい均衡を崩そうとする因子どもを先んじて叩く役目を仰せつかる『外商部員』──つまりは、ゴリゴリの戦闘兵なのだった。
まあ近未来SFなんていうとなんか堅苦しいですからね。端的に申し上げましょう。
……みんなー!!普段は売り上げ底辺の冴えないおっさんがスーツ着て銃ぶっぱなして戦うやつだよー!!大好きなやつきたよーー!!!ぶつくさ言いながらなんやかんや強くて有能、その上時々コミカルもあるやつだよーー!!百貨店のバックヤードでドンパチやったりするよーー!!!!今ならなんとちょっと生意気でミステリアスな中華小娘もついてきます!!あとはガラの悪い連中のボスでありながらスーツ着て堂々と百貨店に乗り込んでくるマッチョおじさまや、人がよすぎる子供たちに大人気のお医者さんなんかもでてきますよーー!!今が!確実に!!読みどき!!!
そんな感じのエンタメがぎゅっと詰まった作品ですが、お話の根底には「どうして宇宙なんぞに百貨店があるのか」──つまりどうして人類が母なる地球を離れなければならなかったのかという、切ない争いの記憶や傷跡が沈んでいます。単に新しい場所を作るだけでは解決しないこれらを見ていると、技術が進歩した遥か先の未来でも「人間って人間なんだなあ…」と難しい気持ちになってしまう。うーん、うううーん……
はい、それがつるよしの先生の作品の醍醐味です。美味しいね(※この読者はすでに改造兵となった身ですが、もちろん初見の方も何不自由なくお読みいただけます)。
作者さんの従来のファンには新鮮で、そして新規の読者さまにはぜひともおすすめしたい絶妙なバランスの一作。おすすめです。
いらっしゃいませ、お客様。
今日はどちらの章(フロア)へご案内いたしましょうか?