第四章:聖獣との出会いと新たな仲間

翌日、食堂は朝から大盛況だった。


「レンさん、今日のおすすめは?」


「今日は『森の恵みスープ』です。体力回復と毒耐性上昇の効果がありますよ」


「それちょうだい!」


蓮は忙しく料理を作り続けた。


昼過ぎ、一人の少女が食堂に入ってきた。


歳は十五歳くらい。長い黒髪に、どこか幼さの残る顔立ち。だが、その瞳は鋭く、獣のような野性味があった。


「あの……お腹空いてます」


少女は恥ずかしそうに言った。


「いらっしゃい。何か食べたいものはある?」


「えっと……何でもいいです。お金、あまりないんですけど……」


少女は小銭を数枚、テーブルに置いた。


蓮は笑顔で言った。


「じゃあ、今日のサービスメニューね。『レンスペシャル丼』、一丁!」


「え、いいんですか!?」


「いいよ。お腹空いてる子を放っておけないからね」


蓮は手早く料理を作った。


魔物の肉を炙り、野菜と一緒にご飯の上に乗せる。特製のタレをかけて完成。


「はい、どうぞ」


「わあ……!」


少女は目を輝かせて、がつがつと食べ始めた。


「おいしい……こんなに美味しいもの、初めて食べました……!」


涙を浮かべながら食べる少女。


蓮は胸が温かくなった。


「おかわりもあるよ」


「本当ですか!?」


少女は三杯も食べた。


「ごちそうさまでした……!あの、私、リィナって言います。獣人族なんです」


そう言って、少女は頭に隠していた狐の耳を出した。


「君が……あの時の!」


蓮は驚いた。夢で見た白い狐。間違いない、同じ気配がする。


「やっぱり、あなたでしたか。私を助けてくれた人」


リィナは嬉しそうに笑った。


「実は私、聖獣の末裔なんです。でも力が弱くて、族長からは役立たずって言われて……それで村を出て、一人で旅をしていたんです」


「そうだったのか……」


「あの、お願いがあるんです。ここで働かせてもらえませんか?お給料はいりません。ご飯だけでいいです!」


リィナは真剣な目で頼んだ。


蓮は少し考えて、笑顔で答えた。


「いいよ。一緒に働こう。ただし、給料はちゃんと出すからね」


「本当ですか!やった!」


リィナは嬉しそうに尻尾を振った。


こうして、蓮の食堂に最初の仲間ができた。



* * *


リィナは働き者だった。


料理はできないが、接客と皿洗いを率先してやってくれた。


「いらっしゃいませー!」


元気な声で客を迎えるリィナ。獣人族は珍しく、村人たちも最初は驚いたが、すぐに受け入れてくれた。


「リィナちゃん、可愛いねえ」


「その耳、触ってもいい?」


「だめですよ!くすぐったいんですから!」


リィナは村人たちとすぐに打ち解けた。


そしてある日、リィナが蓮に言った。


「レンさん、私、もっと役に立ちたいです。料理を教えてください」


「料理を?」


「はい!レンさんみたいに、みんなを笑顔にできる料理が作りたいんです」


蓮は頷いた。


「分かった。じゃあ、基本から教えよう」


こうして、蓮はリィナに料理を教え始めた。


リィナの成長は早かった。獣人族特有の鋭い嗅覚と味覚で、すぐにコツを掴んでいく。


「レンさん、この野菜、ちょっと苦いです」


「よく分かったね。じゃあ、こうやって下処理をすると苦味が抜けるよ」


二人で料理を作る時間は、とても楽しかった。

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