手紙と海
ゆた
写真を撮りに海に行く
僕は、手紙をポケットから取り出す。彼女からもらったものと別に、もう一つの封筒を取り出して、彼女に差し出す。僕が書いたものだった。昨日、夜にラジオを聞きながら書いた。僕の言いたいことを書き、彼女が書いていたことについて考えた。彼女が書いたことに対して何を僕が言えばいいのか、考えることは難しかったが、正解かどうかはともかく、僕がちゃんと彼女の文面を読んだことは伝えねばならないと思った。
「ありがとう。また帰ってから読むね」
彼女は少し笑顔を見せて、鞄に手紙を仕舞う。
「今日も図書館に行くの?」
僕は首を振る。今日は診察の日だ。
公園内は静かだった。ときどき、犬の散歩をする人が通りすぎたり、美術館に出勤する人たちが歩いていったりする。
ホノカは絵を描いている。横にカメラがあった。今日も撮影するのだろう。
「何の絵を描いてるの?」
そう僕が聞くと、彼女はスケッチブックを持ち上げて、僕に差し出してくる。
受け取ると、スケッチが描かれている。目の前に見える景色。海と、橋と、人々の姿と。それらはそれだけが切り取られている絵もあったし、いろんなものをまとめて描いているものもある。
「どういう構図で撮ろうかなぁって考えてたところ」
しばらく、彼女がペンを走らせる音を聞いていた。
「今日も、夜明け前から撮影してたの?」
彼女が聞く。僕は、「今日は寝ていた」と話す。
海は、きらきらと輝いている。怖いのに、なぜ僕は今日も海を撮りに来るのだろうか?
手紙と海 ゆた @abbjd
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