いじめを苦に現実世界に転生した俺は現実世界で人間の子どもを知りました。
きゃっくん【小奏潤】
子ども
俺の生まれは異世界だ。
今の俺は動画サブスクでアニメを見ている。最近は異世界転生ものが多い。好きなわけではない。こちらの世界の人が異世界に幻想を抱きすぎていて面白いのだ。
「現実の異世界はこんなに甘くない」
リモコンを触って地上波の放送にした。関西のぶらり旅だ。テレビというものは便利だ。理屈はわからないが遠くからの映像が見れる。それは別大陸であったり空からの映像もある。もちろん、編集されていたり、アニメーションもある。
話を戻そう。俺は異世界で暴力を受けていた。……こちらの世界風に言えば『イジメ』『パワハラ』というものだ。
それを苦に自殺したのだ。確かにあちらの世界では死ぬことはできた。しかし、魔力値が高すぎて異世界に転生するしかなかったのだ。
「あぁ、どうして、俺はあのまま死ねなかったんだろうか……」
あちらの世界にもこちらの世界にも神なんていない。きっと長寿のエルフがこちらの世界でひょこっと善行した様子が後世に『神』として伝わったのだろう。
――エルフ族は気軽に異世界に遊びに行く。それにイジメで嫌いな相手を異世界に送ることもある
俺はこの世界でどう過ごすんだろう。親なんてものはあちらの世界でもいないようなものだった。あたりまえだが、こちらも同様だ。
外に出よう。その前に鏡で身なりを整えよう。
「危なかった」
おでこに剥がれかけのウロコがあったのだ。魔力を少し使って完全に見た目をこちらの見た目にした。身長も服装も、あと、性別も。
ちょうど異世界からこちらに来た日に別大陸の国のトップが『性別は男と女のみ』と宣言した。それからしばらくしてこの国では『カップ麺すするのが性的』『男が産めるのは大便だけ』というおバカな発言が目立った。
転生する世界を間違えたかもしれない。来てすぐの頃は別大陸に行くことも考えた。別大陸に行き永住するにはパスポートとなにかがいるらしい。確かに、こちらの世界のパスポートの取得方法は必要な仕組みだ。
転生時にこちらの世界のアイテムを魔力で生み出した。確か携帯電話と言われるものだ。これがあればだいたいのことはこれでできる。
――こちらの世界ではこれが魔法か
調べ物ついでに知った単語がある。
『トランスジェンダー』
トランスジェンダーは認めてもいいと思う。俺のいた異世界にもそういう人達はいた。ちなみに、心はエルフだけど身体はドワーフの人などだ。
「まぁ、無戸籍の俺には関係ないか……」
この世界に魔力は存在しない。感じるのは俺の魔力だけだ。
「
ドンドンと部屋をノックしている人がいる。きっと管理人だ。他の人は管理費込みで30万円近くのボッタクリ金額で家賃を払っている。
この管理人は『自殺をしない』これを条件にボクに部屋を格安で貸してくれている。
――格安すぎんだよなぁ、1か月2万円は
ホントに頭が上がらない。
「まぁ、頭をあげると火を吹きたくなるし……」
頭を下げたまま戸をあけた。
「あぁ、竜火さん、今日も生きててえらいわ」
「あざっす。生存確認はそんな感じで」
『竜ちゃん、どこなの?』
まだ赤子に等しい年齢の声がする。こちらの時間軸はだいぶ遅い。元いた世界の1年……いや、もっと短いかもしれない……が10年だろう。10年も過ごしていないが転生してすぐ時間を計算していたのだ。
「竜ちゃん?」
「わー」
目をキラキラさせた幼子がいる。
そうだ、俺はハーフエルフだ。恐れろ。幼子なんて触れれば死んでしまう。
俺はエルフと人間のハーフじゃない。エルフとドラゴンの間の子だ。住まわせてもらっていた村の人族からも生まれ故郷のエルフの里からも嫌われていた。それも自殺の一因だ。
「この子は私の孫よ」
ポンと幼子の頭に手を置いた。特に意味はない。ちょうどいい場所に頭があっただけだ。
それなのに……
ニマッと笑顔を浮かべててもっと撫でてと言わんばかりの笑顔をしている。
これが……これが、これが……幼子というものか。
「子ども……か」
いじめを苦に現実世界に転生した俺は現実世界で人間の子どもを知りました。 きゃっくん【小奏潤】 @kokanade_jun
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