第20話 索敵には、
「ということで手伝え」
「なにをでやがりますの!?」
家に帰るとソファでくつろぎながらアニメを視聴している †漆黒の堕天使† ちゃんが(案の定)いた。
「えぇ……この人怪異なんよね? なんていうか、えらい自堕落な怪異もおるっちゃね」
ほら、燈火ちゃんにもこういわれてるぞ。
いったいいつからこんな自堕落な人間になってしまったんだ。
悪霊時代の彼女が見たら泣くぞ。
とりあえず、アニメを一時停止して、燈火ちゃんと話したことを †漆黒の堕天使† ちゃんにも話す。
「ふんふん。つまり、カガセオって怪異を倒すために、居場所を特定してくださいって話ですわね」
「そういうこと」
「よろしくってよ。私もあいつは気に食いませんですし」
一つだけ話していないのは、最終的には †漆黒の堕天使† ちゃんも祓ってもらうつもりのこと。
そんな騙すような言い回しで人の心は痛まないのか? という疑問もあると思う。
しかし、これは彼女も得意とする手口。
目には目を、歯には歯を。
ハンムラビ法典にもそう書かれている。
「ん-。ただ、何の手がかりも無しに特定するって言うのは」
「手がかり?」
「ここ恒凪には曰くある話が多すぎるんですわ。その中から、ピンポイントで見つけ出そうとすると……カガセオや私みたいに、他の怪談を利用するタイプならなおさらですわ」
「闇バイトの裏に反社の影が見え隠れしていても、実行犯から暴き出すのは難しいみたいな?」
「まあ似たような話ですわ」
まったくないわけじゃない。異界だ。
封神巫女と敵対する彼らは、恒凪のどこかに異界との出入口を繋ぎ、そこからアジトと恒凪を行き来している。
(アニメにも、敵組織を襲撃するエピソードはあったけど、出入り口の設置場所は頻繁に変えてるみたいなんだよな)
敵ヒロインちゃんを捕縛して、彼女から情報を引き出すことでようやく場所が判明した、って流れだったはず。
(ん? そう考えたら、原作で †漆黒の堕天使† ちゃんはどうやって異界とのゲートを見つけ出したんだ?)
彼女自身、この恒凪から特定の怪異を見つけ出すのは難しいと言っている。
偶然だったのだろうか。
それとも……。
「一応聞くけど、本当は探せるけど、無償で情報提供するのはもったいないからこっちの譲歩を待ってるとかじゃないよな?」
すいーっと視線を逸らす †漆黒の堕天使† ちゃん。
俺はすっと、破魔のお札を取り出した。
「待って、待ってくださいですわ! 誤解ですの!」
残像が残るくらいの速度で腕を振って †漆黒の堕天使† ちゃんがまくし立てる。
「本来の力があれば見つけ出せますわよ!? でも、いまの私の情報収集能力は軒並み制限が掛かってて、現状だと見つけられないってのは本当なんですわ!」
「む」
つまり俺が蔵屋敷のツイートを消してないのが原因って言いたいわけか。
「じゃあ仕方ないか」
「ほっ。すぐに破魔のお札に訴えるのはやめて欲しいですわ。心臓に悪いですわ」
しかし、そうなると難しいか。
木を隠すなら森の中。
怪談を隠すなら恒凪の中。
「うーん。森の中から木を見つけ出す方法か……あ」
「なにか思いついたんですの?」
思いついたか思いついていないかで言えば、思いついた。
けど、どうなんだ。
この方法は、なんというか。
あまりにも、外道過ぎないか?
「ちょっと燈火ちゃんと相談するから席を外してくれる?」
「はぁ!? どうしてでいやがりますの!? ここは私の家ですわよ!?」
「俺のだよ。出てけ」
「嫌ですわーっ! 絶対、絶対悪だくみしているんですわーっ! 私も一枚かませて欲しいですのーっ!」
失礼な。何が悪だくみだ。
社会貢献と言って欲しいものだ。
「まあまあ、現状、協力的なんだし、聞かせてあげてもええんとちゃうやろか」
「おお、封神巫女のくせに話がわかりますわね!」
おいおい、そこで意気投合するのかよ。
「いや、絶対聞かせない方がいいと思うんだけど」
「どんだけ腹黒いこと考えとると!?」
「そうですわ! やましいことを考えてる自覚があるならとっとと告解すべきですわ!」
キリスト教徒じゃねえのよ。
「大丈夫、岡元くん。わたしのことば信じて」
燈火ちゃ……!
そうか。そうだよな。
†漆黒の堕天使† ちゃんがいるからなんて理由で打ち明けないのは、彼女の実力を信じてないってことになるよな。
知られたとしても、燈火ちゃんなら何とかしてくれる。
そう信じられるなら、言っても問題ないという結論にたどり着かないとおかしい。
「それじゃあ、一つ――」
◇ ◇ ◇
「あなた、頭おかしいんじゃありませんの!?」
「うわぁぁぁっ! やってもうた! やってしもうたと! こんな話聞かん方がよかったと!」
なんでだよ。
お前らが言えって言ったんだろ?
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