新入社員の迷田くんは極度の方向音痴です

岩名理子

【#1 新入社員、迷田くん】※一気読み推奨、途中💛やコメ無しOK

 眉目びもくが鋭く整った美男子――というのが最初の感想だ。


 頭もよく背も高い、数々の新入社員の中で、あらゆる意味で飛びぬけた人物の『迷田まよいだくん』は、朝礼で私の真横に立っていた。


 女性社員から注がれる熱視線をものともせず、きりりとその強い瞳で上司をみつめ、その話だけに耳を傾けている。


「家が近いそうだな。降谷ふるやさん、迷田くんのことを頼んだよ」

 

 女性社員の迷田くんへの熱視線はその瞬間、ふるやに対する嫉妬じみた視線へと変貌した。


 家が近いからよろしく、という意味が理解不能だった。朝礼後に上司に抗議をしたが誤魔化されて徒労に終わる。


 私は翌日、理由を思い知ることになったのだ。


 翌朝9時、出勤しないな迷田くん、と――

 そう思っていたところに会社携帯が鳴った。

 

 迷田くんだ。

 嫌な予感がする。


「降谷先輩……助けてください! 道に迷いました!!」


 私はその瞬間、バッグを片手に部署を飛び出す。


 完全無欠(?)だったと思われた彼は――なんと極度の方向オンチであった。


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