言の葉に託す2人の青春絵巻☆

 「はっ、はひっ?!」壇上で輝くお二人をみたとき、マジで心臓止まりけり。
 一瞬、ご来迎の御仏が見えたけど、ねんごろにお帰りいただきました。

 文化祭。体育館で行われた文芸部のパフォーマンス。
 激しいビートに乗って刻まれる言の葉に圧倒され、わたしは気絶しそうになった。
 「菅原、大丈夫か?」「サラちゃん保健室行く?」友人たちが心配そうにのぞき込む。

 「だ、だいじょうぶ。ちょっと浄土に行きかけただけ……」
 
 息も絶え絶えになりながら、わたしは壇上のお二人を仰ぎ見る。
 ――間違いない。あれは、清少納言様と紫式部様だ!

 わたしの名前は菅原サラ。身長145cm体重ヒミツの15歳☆
 前世は菅原孝標女。といっても知らんかろう。詳しくは「ゐぃきぺでぃあ」をご参照あれ。
 何の因果か令和の御代に転生した、文献に残る日本最古のオタク女子である。
 
 しかし、壇上に見ゆるは神オブザ神!

 清子センパイのかんばせに光る汗。紫センパイのいとなまめかしきお声。
 サラは、いとありがたき御幸に、身も心もとろけ果てなんとす!

 「文芸部。文芸部……ハァハァ(*´Д`)」

 「……サラちゃん、やっぱ保健室いこっか」

 あっ、あっ、待って! 抱っこしないで! 紫センパイ! 目線プリーズ!! ……。



 言の葉を編む行為は、本朝においては平城京の御代より今日に至るまで、多くの人々によりなされてまいりました。
 今日、わたしたちはオンラインという場において、莫大な数の言の葉を日々編んでいます。
 そのひとつ。このお話は、日本史上屈指のエッセイストと恋愛小説家が令和の御代に転生するものでございます。

 物語は全14帖。いずれにも、言の葉への繊細なまなざしをお二人の感性で語るところに、もののあはれを感じます。
 そこには、まるで『平家物語』のように(敦盛様のシーンはスタバでギャン泣きしてしまった)ぶつかりあい、ときには色を語る『伊勢物語』のように(夜に読んだらドキドキしすぎて徹夜した)恋心に向き合う姿もございます。
 まことに夏のそらのごときうららかさと、あはれなるもののあはひをうつしとりたる青春の1ページでございます。

 もしあなた様がご覧になる折には、どうぞ肩ひじ張らずに、ゆるゆるとしたお気持ちでお読みくださいませ。
 前世がちょっとすごいだけの等身大の女の子と、そのまわりの人々が織りなす青春絵巻。
 書き手様のいとやさしげな筆の運びは、あなた様をあたたかな気持ちにさせることでしょう。

 どうぞお読みあれ。

 (記:日乃本学園高校1年 菅原サラ)

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