【更新休止中】召喚聖女の奮闘劇~興味本位で異世界召喚されて、聖女になりました~
リンネ
プロローグ
第1話 興味本意で勝手に召喚される聖女
11月26日 午後4時34分
王国・パラティーヌ
ロスペン侯爵家・書庫にて。
一人、熱心に本を読み漁っている少年がいた。歳は10代半ばだろう。レンガ色の髪の毛に、仕立ての良いシャツにズボンだけのシンプルな軽装姿。そんな彼の姿を異様と思わせてしまう要因が一つだけあった。
それは、積まれた本たちが魔方陣の如く、中央で本を読んでいる少年を取り囲んでいるからだ。誰が見ても、異質かつ異様な光景。そんなことはお構い無しと言った感じで、少年は熱心に本を読み込んでいた。
気がすむまで本を読み込めたのだろうか。少年は手にしていた本を床に置き、天を仰ぎ始める。
「ふぅ…。ざっとこんな感じかな…」
大きな目標を達成して得た、満足感を胸いっぱいに広がせて、少年は床に寝転がってしまう。
「王国の安寧をもたらす聖女か…。国に仕えてるし…平和を願う祈りとか…言葉を【加護】や【呪い】変える力で、傷や病気を癒したり…相手に加護を与えたり…呪いを与えたり…チート過ぎるだろう…反則だわ」
独り言を呟き、一人で納得した少年は起き上がると、軽く準備運動した後、近くにあった本を一つ手に取る。
「あ、書くものが必要か…持ってくるの面倒くさいし…魔法で持ってくればいっか」
少年の右手が赤色に淡く光る。すると突然、空中に白のチョークが出てきて、少年はそのチョークをノールックで、右手でキャッチする。
「召喚用の魔法陣は適当。大きな丸かいて…その中に星かいて…」
テキパキと本を見ながら、床に魔法陣を書き進めていく少年。
「星の周りにまた小さな丸かいて…その中には、月とか?三日月とか?まぁ、そこら辺のヤツを適当に書いて……」
出来上がったのか、満足そうにチョークを床に置く。
「興味本意でやったけど…良いデキ!! いや…これで兄たちに誉められる?って、そんな生半可なヤツで誉められないよね……」
深いため息を浮きながら、少年は残念そうに肩をすくぼめる。
「よし、悲しんでいる時間はないッ! えーと、魔法陣が完成したから……次は…『召喚用の言葉』だよね…。えーと…兄たちがやってた…ヤツは…」
昔の記憶を必死に思い出していた少年は、何かを閃く。
「あッ。もう、適当に『聖女よ!出ろ!』って言えば良くない?それしかないな。うん」
「てことで…『聖女よ!出ろ!』」
高らかにそう言い放つ少年。だが、何も起きなかった。聖女すら出なかった。
「え?あれ?おかしいな…って、全部適当にやったんだから……流石に聖女は出てこないよ。出てきたら奇跡だけどね」
一人で納得した少年は、後片付けを始めた。積まれた本や床に落ちた本などを拾い始める。
突然、魔法陣が赤色に淡く光出す。光はどんどん強くなる。それに気づいた少年は、思わず目を手で覆い隠してしまう。
数分も経たない内に、光は弱くなっていく。手で覆い隠すほど眩しく無くなったと、思った少年は手を下ろす。
だが、目に映った光景に唖然としてしまう。
なんと…魔法陣の上には、見知らぬ学校の制服をきた、片手に本を持つ、黒髪の少女がいたからだ。
「えッ?」
「はッ?」
互いの視線が交差する。沈黙が、書庫の空気を一瞬にして凍らせた。
その数秒後――少女一人・少年一人の叫び声が書庫を中心に、ロスペン侯爵家全体に響き渡った。
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