5-2

 練習が終わった後、駿はさっき笑っていた隆二を問いただす為に話しかける。


「俺が祐希との試合の後、こそこそ笑っていたけど、何か面白い事でもあった?」

「別に笑ってないけど、それよりも浅村、早川の元に行かなくても、大丈夫なのか?」


 まるで何も無かったかのように、違う質問を返してきたので、明らかに笑っていた事実を隠しているように感じた。


「隠し通そうとしても、無駄だぞ」


 隆二が大きく息を吐いた後、あっさりと、自白し始める。


「祐希の言葉に対して、浅村が分かりやすく反応するものだから、笑わないでいる方が無理」

「そんなに分かりやすかった?」

「凄い分かりやすかった」

「マジか…にしても、その都度思うんだけど、祐希って、こう言う事に関する感が鋭いんだ?」

「さーな、祐希も気になってる人が居るから、感が鋭いんじゃないか?そこら辺は知らんけど。それよりも、本当に早川の所に向かわなくて大丈夫なのか?」

「ヤバい、そろそろ行かないと。じゃあ、また明日」

「じゃあな」


 部室を後にして、果奈と待ち合わせしている場所へと急いで向かった。


 少しだけ果奈を待たせてしまったが、果奈は少し長引いたのだと、思ってたみたいで、いつものように帰路に着いた。


「今日も部活の練習疲れた〜」


 そう言いながら、果奈が腕を上に伸ばす。


「そういえば、果奈の県大会って今週末だったよね。俺も見に行きたかったな〜」

「駿も大会前で練習が忙しいからしょうがないよ」

「分かった、俺も県大会行けるように頑張るよ」

「(でも、本当は来て欲しかったな)」


 何て言ったのか分からなかったが、微かに果奈の声が聞こえた。


「今なんか、言った?」

「うんうん、何でもない」


 自分の質問に対して、果奈が焦ってるように見えた。


「実は今日、果奈の練習しているところ見たよ。果奈ってバトミントン凄く強いんだね」


「えっ!?、見てたの?」


 果奈自身はバトミントンしている時の姿を見られるのが恥ずかしいみたいで、頬を赤く染める。


「だけど、俺も部活の練習中だったから、ほんの少ししか見てないよ」


 本音を言うと、ずっと見たかったし、真剣な横顔に、ただ見惚れていた。


「私、バトミントンやってる時、真剣のあまりに、変な顔になるから、あまり見ないで欲しかった」

「そんな事無かったよ。むしろ真剣な表情でかっこよかった」


 それを聞いた果奈が更に頬を赤くする。


「なら、駿の大会が一段落して…予定が空いてたら、大会見に来ても…良いよ。そこまで言うなら、駿に私のかっこいいところ見て欲しいし…」

「絶対に見に行くよ」

「あくまで駿の大会が一段落してからだから、今週末の県大会は駄目だからね」

「分かりました。俺も大会が近いし、練習頑張るよ」

「私も駿は居ないけど、少しでも上を目指せるように頑張るね」


 果奈と部活動の話をするのは楽しかったが、同時に果奈に負けていられない——その思いが芽生え始めていた。

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