3-3

 放課後になり、駿は近々ある大会のために部活に向かおうとしたが、今の自分の状態では集中できず、部員に迷惑をかけるかもしれないと思い、顧問である今江先生に体調不良と嘘をついて部活を休む事にした。


 教員室に向かい、今江先生を呼ぶと、部活を休ませて欲しいとお願いする。


「今江先生、体調が悪いので今日、部活休ませてください…」


 その声は自分でも分かるくらい、全く覇気が感じられない。


「分かった…早く体調治せよ」


 今江先生は休む許可を出すが、その目は自分を心配しているように見えた。


「分かりました…ありがとうございます…」


 申し訳ない気持ちを抱きながらも、学校を後にして家へと帰る。


 家に帰ると誰も居なく、学校であった出来事が嘘かのように静かな空間が広がっていた。


 自分の部屋に着き、制服のままベットに倒れて仰向けになると、改めて今日の出来事について考え込む。

 もしあのとき、迷わず果奈のもとへ行けていたら果奈は泣かずに済んだのだろうか?など、現実から目を背けたいことばかりで左腕を目の上に当ててしまう。

 

 しばらく時間が経つと、玄関が開く音がする。その音ですら、やけに遠くに聞こえた。


「ただいま〜兄さん居るの?」


 帰ってきたのは結で、自分が居るのかどうか呼んでくるが返事する気力が起きない。


「兄さん居るんでしょ、返事ぐらいしてよ!」


 何度も呼んでも反応しない為、結が部屋までやって来て言った。


「結ごめん、今ちょっと1人にしてくれないか」

「分かったけど、学校で今日、何かあったの?」


 今までに無いくらい、落ち込んでいる自分の姿を見て、いつもは冷たい結が珍しく心配する。

 

「何にもない…」

「ふんっ!もう、兄さんなんて知らない!」


 心配してくれたのにも関わらず、頼ってくれなかった為、結は怒りながら駿の部屋を後にする。


 そしてまた、時計の針の音だけが、やけに大きく響き始めていた。

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